第45話

「んで、俺はどうして呼ばれたのか、説明してくれるよな?一雫」


「YES。マスター、ここはスタンビート対策会議、そしてこちらは全員各地方のギルドマスターでございます。そして私はこの者共にマスターの力を見せ、今回のスタンビート切り札になるようにとのお願いをしておりました」


「OK一雫、簡潔な説明どうも」


「ありがとうございます」




「ひ、一雫殿。この者は一体?」



「ああ、我がマスターにして今回の切り札、ジョーカーの役割をしていただきます。名はナカミヤ ソウタ。私のマスターです」



こんな状況になっても冷静に話を聞き、状況を整理できるギルドマスターに創太は感心を覚えながら一雫の話を聞いていたが、



「ではマスター、お言葉を」


と一雫に話を振られ、一歩下がったので、面倒だなと最近ずっと思っていることを思いながら創太は必死に話の内容を頭に浮かべる。




「あー、さっき紹介に当たったナカミヤ ソウタという者だ。単刀直入に言わせてもらおう。俺ならあの怪物の軍勢を何とかできる。一人でだ」




その言葉にギルドマスター全員がはっと息を漏らす。そして一人のギルドマスターからこんな言葉が投げかけられた。


「だが、本当にできるのかね?相手にいるのは3000はくだらない。そしてA、Sランクの魔物もいるのだぞ!それをたった一人で相手するなど、無理だ」

「ハッタリにも程があるぞ!」

「そうだ!」


「ですが最早貴方たちにどうこうする術はないので?」


という一雫の痛い一言を浴びせるとギルドマスター全員が黙りこくった。自覚しているのだろう。それを見た創太はある提案をした。



「最も、お前らの言うこともまた一理ある。ということで今から俺の力の一端を見てもらおうと思う」



そう創太が言うと同時に創太の神術が発動し、結界魔法の域を超えた<神術>『神界』を使い、大陸よりも大きい範囲で、辺り一面白一色の世界にギルドマスター12人と創太達に一雫を入れた16人がその結界の中にいた。



「ど、どういうことだね!これは」

「まあ少し黙ってください、これはマスター。ナカミヤ ソウタの結界です。マスター以外に解除できず。たとえSランクが1000体の同時攻撃でもびくともしない結界です。マスターはここで己の力を誇示しようとしているのです。ですのでしばしお待ちを」



そういうとギルドマスターたちは黙って創太を見ていた。にその眼はまるで救世主かどうかを見定めるギルドマスターという者には不可欠な目をしていた。



「ではまず、これが今回のスタンビートの大体の見取り図だ」



そういうとギルドマスターたちは透明な板の上に立っており、その板がグングン上昇しているのをギルドマスターたちが確認したと思えば、いざ下を見てみたらスタンビートが王都の目の前にいる所を見ていた。正確には創太が結界の中で起こしているシミュレーション、所詮動く模型みたいなものなのだが、ギルドマスターは絶望に打ちひしがされた顔をしている。



「だが俺なら、こうできる」



そうしてその板の上から飛び降り、現在進行形で紐なしバンジーをしているさなか、創太が指をパチンと鳴らすと、創太の<神術>『虚無玉――<ブラック・ホール>』の黒い球が1500個も創太の周りに浮き、もう一回パチンと鳴らすとブラックホールである黒い玉が各地に散らばり全てを無に帰さんと吸収を始める。

魔物は問答無用で抵抗を一切許さずその黒い玉の中に消え失せる。だがその黒い玉はとどまることを知らず、ひたすらに吸い込む。



その姿を見たユリア、アルはうんうんと頷き、一雫は何食わぬ顔をしているが、ギルドマスターはその例外だった。皆が皆おぞましい化け物を見る目に変わっていき、恐怖で顔を青ざめた。

そしてすべての魔物がいなくなるころには、12人の内4~5人のほどのギルマスは立っていられなくなっていた。そしてそこに掃討が終わった創太が駆けつける。



「で、どうだ?」



そう言うと創太は結界を指パッチンで解除し元のギルド会議部屋に戻った。ギルドマスターはおどろおどろしく席に戻った。


いくらギルドマスターといえどもあれがハッタリだと疑えるものはいなかった。あんな力を持った者などこの世界というものが出来てから一度もないのだから。そうしてしばらく残ったギルドマスターのヒソヒソとした話し合いが始まり、そうしてギルドマスターの決断を創太が見る時が来た。






「では皆さま、決を採りましょう。この者を今回のスタンビートの切り札たる存在になりえるかどうかの決でございます、現在何名科のギルドマスターは決を採れる状況ではございません。ですが一分一秒無駄にはしたくない。ですので今ここにいる8名の内6名以上の人数が可決すれば可決になります。このスタンビート自体が異例なので皆さまギルドマスターとしての眼を信じ、己の決断をよろしくお願いいたします。」







「…賛成」


「賛成」


「賛成」


「賛成」


「賛成」


「賛成」


「賛成」


「賛成」




「ではこの投票を以て賛成多数で可決いたしましょう。」




そして決まった瞬間、一雫と創太は顔を見合わせ、お互いに頷く。



「そしてこれを決めたにあたり、私達もただで行動するわけにはいきません。よね?マスター」


「ああ、その通りだ、俺たちは俺の力を無条件で見せたからなあ?しかもあれがこの世に知れ渡ったらどんなことになるかわからないからなあ?ということでまず一つ・・・・・」




そして条件がまとめられ、ギルドマスターへと提出した。




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『緊急時におけるスタンビート契約書』




1 ナカミヤ・ソウタとその仲間の存在とその力についてギルドは全てを黙秘すること。



2 魔物を倒した時のアイテムを中宮創太は4割をギルドに売ることを約束すること。



3 報酬は5億コルを一年以内に払うこと。 



4 もしも1の事項が破られた場合、ナカミヤ・ソウタとその仲間たち(以後彼らと呼称する)はここにいるギルドマスター12人に危害を加えても法で裁くことはできない。



5 以上の契約をこの対都市級スタンビート1号をの依頼を解決し、そのうえで優秀な戦績を重ねた場合に2、3、5の契約が施行される。なおその戦績の明確な記載として、スタンビート総数の3分の1とし、それを彼らたちで倒すこととして優秀な戦績のノルマとする。



6 ナカミヤ・ソウタがギルドの会員になることを条件に、ギルドは全ての力を以て彼らの後ろ盾になり、ナカミヤ・ソウタがギルド会員脱退またはナカミヤ・ソウタからの断りを受けない限り解消することもできず、もしも仮にギルドが裏切った場合には合法的にギルドを処罰できる権利があることを約束する。なお裏切ったという判断は全てナカミヤ ソウタに判断を一任する。



7 この1~6まで契約を破棄した者は中宮創太と一雫、またはその仲間の名のもとに合法的に処罰する事をここに誓う。



8 対都市級スタンビートの対策に置いて、ギルドはナカミヤ・ソウタに協力を惜しまないことをここに誓う。もしもギルド内で協力を惜しんでいるというある程度の意見が出た場合、ナカミヤ・ソウタはギルドに対して命令を一つ執行することが出来る。ギルドはそれを拒否した場合、7の項目を無条件で執行することが出来る。


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「ではこれでどうでしょうか」



という一雫だったが、創太は内心少しビビっていた。主に演算や、これをすぐに考えることが出来る頭を持っている事が。



(あいついつの間にそんなものまとめてたんだよ、底が知れないな、我ながら凶悪なスキルだ)





「ああ、構わない。この事態自体が異例に異例を重ねている。そしてこれを乗り越えなければギルドは壊滅に陥る。それを止めてくれるヒーローが現れたのであれば全力でそれにしがみつかないといけない、そのためであれば多少痛い損害でも受けるしかない。全力でサポートさせてもらうし、もちろんその逆を今からしてもらう。お互いギブ&テイクで行こう。よろしく、我がギルドのパートナー」



と青年であるウェンネルが握手を求めてきているので、一雫が代表してその手を掴み握手を交わす。こうしてこれを以て創太、ギルド陣営の契約が完了した。



「ああ、それともう一つお願いなのですが、ギルドの最高ランクの宿を貸してはいただけないでしょうか、もちろん報酬は後できちんと払いますよ」


「ああ、構わない。むしろ金をとるなどとんでもない。今すぐソウタ殿には休んでもらって、近いころ来る戦いに備えてもらわなくては」


そしてウェンネルは笑顔は言ってくるが、創太の頭は別の事を考えていた。



(一雫はこうも言った。宿は取れていると、…オカシイな、これだとまるで、一雫がこれを呼んでいたみたいだ、…いや、あの野郎読んでやがったな?…我ながら凶悪なスキルだ)







「ではマスター、私はスタンビートの討伐方法とその他諸々の話をしたいので失礼いたします。失礼いたします」


「ああ、分かった。それと一つ質問なんだが・・・・・俺は好きなようにやってもいいんだよな?」




その言葉に一雫はニイイィィィッと口角を吊り上げ、




「ええ、全て私にお任せを。この一雫が全身全霊を以てバックアップや事後処理に努めさせていただきます、お任せを」


「ああ、その言葉で俺は十分だ、期待しているぞ。一雫」


「YES マスター、お任せあれ」



その言葉を聞いたのを尻目に、ギルドマスターが用意したホテルへとユリア、アルを連れて転移した。



……このスタンビートをどうしてやろうかと、何をしようかという創太のまるで悪魔が住み着いたような笑みを浮かべながら。この世界を余すところなく楽しもうとするその本能から、無意識に笑みを浮かべている事に創太はまだ気づかない……。

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