第15話 1番星
「初めまして、祐希君」
いきなり横に座ってきた人が、何故か僕の名前を知っていた。
「……は、初めまして」
少しニヤリと笑いながら、その人は言う。
「君の事は生田から聞いたよ、西野を助けてくれた
んだってね」
「えっ……あ、はい」
(この人は誰……なんだ?)
「本当にありがとね。
怪我の方はもう大丈夫なのかな?」
「いえいえ、そんなとんでもない。
大した怪我もしてませんし、もうすっかり良くな
りました」
「そっかー、なら良かった!
あ、そういえば自己紹介がまだだったね、
ボクは……」
そう言いかけると同時に、一曲目が始まった。
幾つの夜空の下を過ごしてきたのか♪
「おっ、この曲は……」
(名乗らんのかい!!)
心の中でそうツッコミながらも僕もステージの方に目を向ける。
今日も夜空の下で君はただ俯いているのかい?♪
この曲はグループのデビュー曲でStarry skyの代表曲とも言える存在だ。
「ねえ君はこの曲、好き?」
ステージをただ見つめながらその人は言った。
「えっ……えぇ、もちろん」
「ボクもね、この曲好きなんだ……」
そう言いながら、ステージを見つめる表情は、何処か切なそうだった。
ひとりぼっちで君は今日も夜空の下を歩くのかい?♪
「ねえ、なんで好きなの?」
「……この曲がですか?」
「いや、Starry skyの事が」
自分勝手に話を進める人だと思った。
でもきっとこの人は、こういう人なんだろうとも思った。
「なんでって……」
「……アイドルなんて沢山いるじゃん
なんでその中でStarry skyの事が好きなの?」
そんな日は上を見上げて見てほしい♪
ほら、こんな夜空を明るく照らす星が見えるでしょ?♪
「……なんか、ベタな例えになるんですけど、
初めてStarry skyを見たとき、アイドルって本当
に輝くんだなって、そう思ったんです」
君が1人でも寂しくないように君が歩く道に迷わないように光り輝いてみせるから♪
「……あの時の感情をどう表したらいいのかよく分
からないですけど、単純にスゴイと思いました。
こんなに輝ける人が居るんだって」
私が君にとっての1番星になれますように
君が私の事をそう思ってくれるように
私は今日も君を照らすから♪
「だから、応援したいなって思ったんです」
「……君って面白いね」
そう呟くと、その人は僕の方を見た。
そして被っていた帽子をとる。
綺麗な女性だとそう思った。
「ボクの名前は
Starry skyのプロデューサーってとこかな」
名前は聞いた事があった。
メディアなどには一切出ず、正体不明のStarry sky
の作詞家兼プロデューサー
まさかそんな人が目の前にいるなんて。
「君、いや……祐希君
Starry skyが輝けるように、彼女達のサポート
してみない?」
一曲目が終わり会場が歓声に包まれる中、僕にはその一言がはっきりと自分に届いていた。
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