アールブの里

「なあルタ、アールブの里ってどんなとこなんだ。」


「主君よ。それは行ってからのお楽しみだが里の皆は私より強いぞ。」


「楽しみが増えたな。」


ニヤリと笑うロレン。


「主人、程々にね。」


「主人よ。間違ってもメインはユウイチさんとの修行ですからね。」


主人が戦闘狂に成っていることに項垂れる相棒達。


「む、0。」


ユウイチが何かに反応する。咄嗟にユウイチは相棒に指示する。


ガキン


大きな金属音が響く。0はギリギリ銃弾を弾くのが精一杯だった。


「馬鹿な、マズルフラッシュだと。それにこの威力間違いない44マグナム弾。」


ユウイチはブツブツ呟いている。


「少々手荒な真似の挨拶を謝罪致します。」


茂みからアールブが出てきて謝罪した。


「エレナさんお久しぶりです。」


「随分手荒だな。」


「そうだね主人の言う通りちょっと荒っぽいね。」


「すみません、ルタ認めた者以外の人を試させてもらいました。」


ユウイチに向けて言うエレナというアールブ。


「じゃあ一つ訊いていいかな。」


「ええなんでも答えてください。」


「そちらの里に銃があるのは何故だ。」


「それは私達に名を与えてくれたあなたと似た人種のおかげであり撃ったのも本人ですよユウイチさん。」


ユウイチはまだ名乗ってはいない。つまりユウイチのことを知り銃の製造方法もしくは銃を持っている人物。それがユウイチには分からなかった。


「どうやら俺を知っている人物らしいな。」


「ええ、とても目の良い御人でしたよ。」


そんな含みのある話を繰り広げている中ふとは疑問に思ったロレン。


「なあルタ。名前って精霊の契約を失敗しても貰う方法があるのか?」


「確かにあります。今私はエレナさんの名前を認識することのできたのは精霊人の特性ですが失敗したものはアールブとだけで判断します。ですが失敗しても男性から名前を与えられればそれが真名となります。」


「そう言うことか。じゃあアレを撃ったのは男ってことか。」


「話しの流れからそう思われます。」


「アレは銃弾だよな。叔父さん曰く遺跡とかでも発掘されるみたいだけど使えないものが多いとか言ってなかったっけ。」


「主君そろそろ着きますので本人に聞いたら如何でしょうか。」


「そうするわ。」


村の入り口と思わしき場所に柵が設置してあった。


「お前は!」


「よおユウイチ君久しぶりというよりかは初めましての方が良いのかな?」


そこには良く言えばアメリカンスタイルのヘアースタイル?悪く言うと禿げてる髪型をした和製イケメンが立っていた。


ユウイチはその人物を見るなり涙を流していた。


「セイゴ!」


「成人式振り、いや葬式振りか。」


「ああお前がアメリカの射撃場でクマに襲われて葬式に行ったとき以来だ。」


「そうか死因は?」


「銃の反動により振動が骨にまで達して脊髄損傷及び骨の骨折によるショック死との判定だ。」


「グリズリーは殺していたか。」


「ああ眉間を貫いていたよ。」


フッと笑うセイゴ


「なあおっさん誰だ?ユウイチ叔父さんの知り合いか?」


「ハハ、もうおっさんか。そうだな俺はユウイチの知り合いさ、前世のな。」


「前世?」


ロレンは意味がわからなかった。


「おいロレン。俺が業魔を習得した裏技っての覚えているか?」


「ああそう言ってたな。」


「それが前世、即ち生前の経験と記憶だ。」


「まあ積もる話もありますが先ずは家に入られてはいかがでしょうか。」


エレナがユウイチ達の間に入って場所を変えるよう促す。


「そうだな。ロレンの修行を行っている間に話そうか。ルタ、後は頼んだ。」


「ええ主君のことはお任せください。」


ユウイチ達とはそこで別れロレン達はルタに着いていく。


「どこに向かってるんだ。」


「精霊を祀っているところです。と言っても小さな社ですがね。」


「結構距離があるんだな。」


「ええ村の外れにありますから。」


ルタは森を切り開かず、森と共にある家々からなるほぼ獣道の道をどんどん進んでいく。


「これです。」


そこには容積が30リットルに満たない小さな社が2つほど存在していた。


「ここで何すればいいんだ?」


「ただここで目を瞑っていただければ大丈夫です。」


ロレンは目を瞑る。ファニ達もそれに追従するように静かに佇む。


「はじめましてだね。あっ!目を開けてもいいよ。」


目を開けるとファニとチェシルはおらず、花の精霊とあったような場所に居た。


現在、目の前にいるのは無邪気な声をだす見た目15歳くらいの半透明な白髪の少女と黙ってロレンを見つめる同じく15歳くらいでこちらはもっと透明度の高い白髪の少女だった。


「精霊?」


「うんそうだよ。僕はスーホ、風の精霊さ。」


「そっちは。」


ロレンは未だ一言も喋らないもう一人の少女に尋ねる。


「水の精霊。」


「名は?」


「レイ。」


どうやら水の精霊ことレイはかなり無口のようだ。


「んで俺になんか用か?」


「そうだよー。ほらアールブ達の試練を突破したでしょう。それで突破したご褒美をあげようと思ったのー。」


手をフリフリしながら言うスーホ


「いらん。」


即答だった。


「なんでーアールブ達みたいに魔法使いたいならなんの枷もなくさせてあげるし他のものでもだいたい叶えられるよ。」


「つまらない。」


「えーそんなことないよー。楽しいよー。」


ブーブー言うスーホはまるで駄々っ子のようだった。


「与えられた力に振り回せる姿を見るのは楽しいか?」


スーホの目が変わった。


「あーあ、バレちゃったー。なんでわかったのー。」


「ラルが悪戯する時と同じ目をしていた。」


「なんだー。ただの当てずっぽうかーなんか損した。」


「勘ってのはある意味で的を射るもんだぜ。」


ロレンは不敵に笑う。


「つまんないなー。じゃあ君が絶望すれば欲しくなるかな?」


パチっ


スーホが指を鳴らすと共にロレンの視界は反転した。


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