二次元少女に愛されて・続?
第23話 深海のような世界
夢は……たぶん、「見なかった」と思う。「アレ」を唱えた瞬間、その意識をすっかり手放してしまったから。真っ黒な世界を漂う。「闇」以外の何も無い、まるで深海のような世界を。
僕は、その海を漂い続けた。何処かに向かうわけでもなく、ただその流れに身を任せて。僕は……「ん?」
何だろう? 誰かの声が聞こえる。僕の心を締め付けるような、とても綺麗で儚げな声が。僕は、その声に耳を傾けた。
助けて……。
声が近付く。
助けて……。
僕は、その声に(思わず)振り返った。視線の先には……誰だろう? 一人の少女(年齢は、僕と同じくらいか? 体型とかは普通だけど、髪が異様に長かった)が溺れていた。体から大量の血を流して。彼女は僕の方を見ると、まるで助けを請うように「早く!」と叫んだ。
僕は、その叫びに戦いた。彼女の叫びが、あまりに恐ろしくて。僕は彼女の叫びをしばらく聞いていたが、その声に悲しみを抱くと、それまでの気持ちを忘れて、彼女の所に近寄り、その身体を「大丈夫? しっかりして!」と抱き寄せた。
彼女は、僕の行為を喜んだ。
「ありが、とう。車に轢かれて、体中が」
「分かった。分かったから、もう」
僕は細かな質問……例えば、「君は、何処から来たの?」とか、「この世界にも車が走っているの?」とか、その他諸々を忘れて、「彼女の怪我を何とかしなければ」と考え始めた。だが……異変が起きたのは、それかすぐの事だった。
「キキキッ」と、笑う悪魔のような声。
少女は顔の表情を消すと、不気味な顔で僕の身体を突き飛ばした。
「愚か者」
「え?」
「
の続きは、聞かなかった。彼女の声が、あまりに腹立たしくて。自分の両耳を塞いだ時も、彼女に向かって唾を吐いてしまった。
僕は、彼女の声に叫んだ。
「うるさい!」
彼女は、その声に黙らなかった。
「キキキッ」と、笑う彼女の声。
彼女は僕が怒った時も、泣いた時も、叫んだ時も、変わらず「訳の分からない事」を喋り続けた。
僕は、その声に(文字通り)苛立った。
「さっきからブツブツと。君は一体、何なんだ? 何も無い所から、いきなり現れて」
彼女は、僕の目をじっと眺めた。
「苦しめ」
「は?」
「自分のやった事を。お前は、自分の行いに苦しめられるのだ。我々は、『それ』を」
「『楽しむ』って? 冗談じゃない! 君が誰だか、ぜんぜん分からないけど。僕は」
僕は、相手の目を睨んだ。
「君みたいな人が大嫌いだ!」
相手の笑みが消えた。どうやら、僕の「大嫌い」に反応したらしい。僕が両手の拳を握った時も、僕の目を変わらず見続けていた。
僕は、相手の目から視線を逸らした。
「ここから出して」
無言。
「いきなり現れたんなら。君、人間じゃないんだろう?」
彼女はその質問に答えず、僕の前からすっと消えて行った。
僕は、その光景に驚いた。
「何なんだよ? 一体」
僕は不安な顔で、自分の足下に目を落とした。それから一時間……いや、もっと経ったかも知れない。自分の感覚を信じるならば……きっと、二時間は経っているだろう。海の色が何となく変わった気もするし、その流れにも微かな変化が感じられた。
僕は無言で、海の中を漂い続けた。
「すうっ」と、呼吸を一つ。
僕はふと、さっきの少女を思い出した。
「あの子は一体、何者なんだろう?」
何も無い所から、いきなり現れて。
「彼女は……」
僕は彼女の正体をしばらく考えたが、視線の先に光を見付けた所で、その疑問をすっかり忘れてしまった。
「あれは?」
僕は「ここから出られるかも知れない」と、その光に向かって進み始めた。光は、僕の前に輝き続けた。僕はその眩しさを我慢して、光の中を一気に進んで行った。光の中は、温かった。まるで人間の心を掻き集めたかのように、あらゆる
僕はその声に感動したが、足下の本にふと気付くと、真面目な顔で「それ」を拾い、本の題名(『また、迷宮の中で』)を確かめてからすぐ、「それ」に導かれるように、その内容をゆっくりと読み始めた。
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