第3話 休職
昼間は、直行直帰の営業の仕事をしている。
会社のSVにLineで休職の報告をする。
すぐに電話がかかってきた。
「大変ですね。人事に連絡しますので、連絡あると思います。しっかり休んで治して下さい。」
「とりあえず、2か月は、仕事に戻れないと思います。ご迷惑おかけします。宅急便も受け取れませんので、送らないように徹底してもらえますか?郵便は大丈夫ですから。」
連絡は、常に取れるようにしていること。
各種報告書も随時提出する。
会社に出社しない私たちは、すべてスマホとタブレットでの報連相になる。
とりあえず、今週は有休にしよう。
傷病手当も申請出来るが、約6割だ。
しかも、復帰してからでないと支給されない。
2月分の給与は、3月7日に支給される。
有給休暇は全額だから、その方が給与は多い。
と言っても、入社してまだ2年目。
有給休暇も多いわけではない。
復帰してもリハビリは続くだろうし、病気になるかも知れない。
2月の段階で有休を使い切るのは不安だ。
メーカーの営業として、量販店を回り、品出しや販促を行う。
裏の階段を上がる。
2か月で果たして、杖なしで歩けるのか。
医師は、6週間という診断書を出してくれたが、
「先生、6週間で歩けます?仕事で車運転するし、歩くんですよ。」
「事務職とかに一時的に回してもらうとか出来ないですか?」
「事務所が、大阪と東京なんで無理ですね。」
「様子見て、診断書は書きますよ。ギプス外すのが6週間て感じです。」
あ~、そんなんじゃ仕事は無理だ。
3月いっぱいは無理だな。
保険会社にも連絡。
青色申告会で入っている共済保険だけだ。
財政難でそれ以外の保険は、すでに解約してしまった。
通院だと、1日3000円。
以前は、色々スポーツ保険などにも加入していたので、
通院でも1日合計15000円くらい出ていた。
だから、リハビリも出来るだけ通った。
今回は、3000円か。
入院しても、1日6000円。
何の足しになるのか。
いやいや、万が一の保険。
ないよりはまし。
だけど、暮らせない。
どうしよう。
お店の家主さんに電話して、事情を話す。
「金曜日だけの営業なので、家賃は払えないかと思います。一度に全部も払えないと思いますが、少しずつでも復帰してから払いますので、2か月ほど待って下さい。」
「足は、大変だね。私も経験あるよ。早くよくなるといいね。分かりました。」
決して快く了解してくれたようではなかったが、一先ず安堵。
しかし、これからどうしよう。
お店を閉じた方が楽かも知れない。
でも、閉店の処理も出来ないし、今辞めるのは辛すぎる。
しかも、こんな形で…
焦るな。
まずは、落ち着こう。
3月は、送別会シーズン。
案外、儲かるかも知れないではないか。
今週末も送別会の話がある。
日頃は、お客さんに電話をしたり、メールをして来店を促すことはしないのだが、
さすがに不安なので、頼める人には、片っ端からメールした。
「あきちゃん一人になります。不安だと思うので出来れば、来店お願いします。」
初めての金曜日は、盛況だったようで、忙しかった。
後輩のI君とゴルフ仲間のO君の2人が手伝ってくれたようだ。
途中、写メが送られてきた。
ありがたい。
その日は来なかった人でも
「しっかり治して下さいね。ママさんが戻ってくるまで僕らが店は守ります。」
と心強いメールをくれた。
お店に出られるようになるのはいつのことか。
昼間の仕事も変わった方がいいのか。
暇な中で、転職サイトをサーフィン。
さすがに年齢が年齢なので、なかなかハードルは高いし、今すぐ面接に行けるわけでもない。
あ~
溜息だ。
親友が、尾道から訪ねてきてくれた。
自身の骨折体験で松葉杖の難しさを理解してくれた。
彼女は、実家で療養だったから、食事や入浴も出来たけど、一人だと大変だろうと言ってくれた。
その日の夕食は、彼女が買って来てくれた幕ノ内弁当。
なかなか出来立ての物を食べることは出来ない。
残念ながら…
営業の仕事を休んでいると同僚からも心配のメッセージや電話が届く。
店舗からも問い合わせの電話がかかる。
「休んでるんで。」
なんてことは言わない。
電話で対応出来ることは、出来るだけ対応する。
対応の早さが私の売りでもあるのだから。
在宅勤務出来るものはないかな?
色々考えてみる。
時間はあるのだから、小説でも書こうと思ったのもこの時。
出来ることは、あるはずだ。
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