第40話 閑話
「ねぇ、真昼。ちょっと聞きたいことがあるんだけど時間いいかしら?」
「え、あっ。うん、いいよ。何が聞きたいの?」
「あのね……えっと…………私に……―――」
「―――友達の作り方を教えてほしいの」
月曜の午前、最後の授業。私はクラスの自席で窓の方を眺めながら、一昨日真昼に教えてもらった友達の作り方を思い返していた。
教えてもらった方法は一つ。
挨拶会釈をすること、だ。
『親しき仲にも礼儀あり! 席の近い人には必ずあいさつをすること!』
そう、真昼は言っていたけど……。
初日で関わらないで宣言をした私がどの面を下げて自分から関わればいいのか……。
今さらになって自分のやらかしたことに気付き、軽く自己嫌悪する。
同じクラス内で友達が作れないってわりと詰んでるんじゃないかしら……。
他のクラスまで行ってわざわざ挨拶するのも馬鹿な話だし。何より他のクラスの友達を作るメリットが分からない。
結局、他クラスで友達を作れても、教室内では一人のまま。
教室外でも私は大抵朝日や真昼、夕と共にいることが多いし、むしろ教室外ではその三人以外と関わりたくないから、作る意味がない。
そもそも友達って一体何なのかしら。
教室にいる間とかしか関わりがないのに、需要ってあるのかしら。
……ダメね。こんなことしか考えられない。
一昨日は不甲斐ない自分につい苛立って宣言してしまったけど、このままじゃ有言実行出来そうにないわね……。
「って、あぁ!?」
考え事をしていた内に、授業が終わっていた。
気づいたときには既に時遅し。ホワイトボードに書かれていた文字は消されてしまった。
ヤバイ、ノートが全く取れていない……。
どうしよう。
クラス毎に進み具合が違うので姉達に見せてもらうことも出来ない。
周りを見れば、居眠りなどで私と同じようにノートを写しきれてない人もチラホラいたが、そういう人達は皆友達に頼み込んでノートを見せてもらっていた。
……なるほど、こういうときのための友達、ね。
確かに需要は少しはあるのかもしれないわね。
って、感心してる場合じゃないわ。どうすれば…………!?
「はい、西四辻さん。使う?」
「へ?」
声をかけられ少し顔を上げると、名前も知らないどころか見たこともない女の子が立っていて、「はい」とノートを私に差し出してきた。
「あの……何で……」
「困っているように見えたから。じゃ、ダメかな?」
「けど私、貴女と友達じゃないわ」
「だったら友達になれば良いよね? 私は
「……悪いけど覚えてないわ」
「えぇー……ひどいなー。まぁいっか、これから覚えてもらえばいいもんね」
そう言って手を差し伸べる女の子。
降って湧いた友達を作るチャンス。掴まないはずがなかった。
「……私は西四辻夜瑠。よろしく」
恐る恐るゆっくりと差し伸べられた手に触れると、勢いよく掴まれ上下に振られた。
「うん、よろしく!」
「……じ、じゃあ遠慮なく写させてもらうわね。一応感謝しとくわ………………ありがとう」
関わらないで宣言をした手前、恥ずかしかったから俯いて小声で呟いた。
瞬間だった。
わー! っとクラス内のあちこちから歓声が上がった。
え、何?この騒ぎ……。
次いで耳に入ってきたのはこんな言葉だった。
「ついに皇女がデレたぞ!」
「お姉さん達以外と話してデレるところ初めて見た!」
「顔真っ赤にしちゃって可愛いー!」
「やはり見てて飽きないな」
丸聞こえなんですけど……。
とりあえず、私が何かツンデレ扱いされていることは気に食わないから否定しておこう。
「私は別にデレてなんかにゃいわよ!!」
あっ、噛んだ……。
カァーっと頬が熱くなるのを感じ、サッと下を向く。
静寂が一瞬訪れ、ワッと大喧騒が巻き起こった。
可愛いコールの連唱が始まる……。
「……何これ…………」
コールは中々止まず、私は姉達が昼食の迎えに来るまで、羞恥に悶えた。
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