1323話 突入! 四十五階
さあてここのボスは……うん、知ってた。ウェアパンサーだよな。さっきのより少し大きくて、身の丈は六メイルってとこかな。
「ガウガウ」
「カムイが隊長に見本を見せてやるってさ。」
「ほう、それはありがたい。勉強させていただこう。」
こいつ素直だな。
『ゴギャギャギャギャアアアアアーー!』
やはり最初は魔声か。当然カムイには効かない。
『ガアアアアアアアアアーーーーーー!』
おお! カムイの魔声返し! きっつ……魔力が濃密すぎる……
密室で使うんじゃねーよ。いや、密室と呼ぶには広い……か? まあいいや。
「ガウ」
一閃。白い光が走ったかと思ったら、ウェアパンサーが前に倒れた。おお、両足ともアキレス腱にあたる所をスッパリ切ってやがる。
ぬっ、また一閃。地面に手をついたボスの両肘が切れた! 肘の内側の靭帯か。あんな狙いにくいところをよくもまあ……
うつ伏せに倒れたところに……首の後ろ側を狙い撃ち……
数度ほど往復して切り裂き続け……あっという間に終わった。さすがに手足と違って一閃とはいかなかったか。ふさふさと毛皮に覆われてるもんな。
「ガウガウ」
「でかい相手は手足から狙えってさ。」
「あ、ああ……勉強になった。とても真似できそうにないがな……」
ピンポイントでアキレス腱やら腕の靭帯なんか狙えるかよ。しかもあのスピード……ウェアパンサーのやつ蹴りの一発すら出せてないんだから。
でも体格差が酷いんだから手足から狙うのは当たり前なんだよな。できるかどうかは別として。あ、珍しく魔石を落としてる。ゲット。
「一応忠告しておく。私も四十五階には行ったことがない……そして魔法の威力が一割以下に落ちると聞いている。心して降りよう……」
「ああ、そんなのも神域あるあるだよな。そうなるとお前らのムラサキメタリックの独壇場か。期待してるぜ?」
こっちにはカムイもいるから大丈夫だろうけどね。
「あ、ああ……微力を尽くそう……」
個人的には全然心配してないんだよな。なぜなら私の予想が正しければ……
さあ、ついに降りてきた四十五階。ここがまだクリアできてないって話だったな。
さぁて……錬魔循環をしてみると……
やっぱりな。
「カース、どう? 私は歩くのには問題ないわ。魔法もどうにか使えそう。でも威力は……『火球』辛うじて戦える程度ね。とても数匹同時に相手はできそうにないわ。」
アレクの火球が酷く弱々しい。
「僕は問題ないよ。海中で魔法を使うより数倍きついってぐらいだね。」
もっと言えばドラゴンに密着した状態で魔法を使った時よりよほど楽だ。
つまりほぼ影響なし。私の無尽蔵な魔力からすれば下級魔法に数倍の魔力を込めたところで誤差にしかならない。やっぱ特注の王族用拘束隷属の首輪で鍛えておいてよかったな。
この部屋の感覚からすると体内で魔力を練る機能を阻害しているようだ。つまり、幼少期から『循環阻害の首輪』や『循環阻止の首輪』で鍛えておいた私にはさほど影響がない。これは神の手落ちか、それとも努力してきた者には優しいのか、どっちだろう?
逆にそれができない者だと十倍の魔力を込めたとしても元の威力が出せるか怪しいものだけどね。
思えば魔力量を増やす目的で各種首輪を愛用していたが、魔力の循環機能も大幅に鍛えられている。知ってたけど。車で例えるとガソリンタンクをガンガン大きくしていくに連れてエンジンの排気量までドンドン大きくなった感じだろうか? 普通はそれに伴い各種パーツを補強していく必要があるのだが、そこは魔法。普段の錬魔循環で漏れなく鍛えられているってことだな。ふふ、予想通りだけど結構嬉しいな。よし、嬉しいから先頭を歩こう、いや、進もう。まだ歩くには全身が痛いから。
「隊長、予定変更。俺が先頭を歩く。隊長は後方の警戒を頼むわ。」
「あ、ああ……それは構わんが……大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってるでしょ? カースはそこら辺の軟弱な魔法使いとは違うんだから。」
体はそこらの騎士より貧弱だけどね。
「じゃ、行こうか。」
と言っても鉄スノボに腰掛けたままだけどね。どうでもいいけどこうやって腰掛けたまま足をぶらぶらさせてると少しばかり冷えるな。たまには地に足を着けないとな。
『
氷壁や氷球と同じ魔法だが便宜上名前を付けてみた。ただの氷の円柱だけど。ほーれ転がれ転がれ。消費する魔力は……普段の三倍ほどはないな。二倍ちょいってとこか。やっぱ問題なしだな。
「ガウガウ」
あ、カムイ。この階は道案内なしでいいわ。全部回るから。久々に宝箱を開けてみたいんだよな。宝箱を狙うにはボス部屋に行かないルート、それも行き止まりにありそうなんだからさ。だから今回は左手を壁に付けるようにして、全ルートを回って宝箱チェックといこうではないか。赤兜の奴らがほとんど来てない階なんだから少しは期待してもいいよな。当たるとデカいって話だし。よーし別れ道は全て左に進むぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます