1315話 激突! 赤兜 VS ウェアタイガー

さーて約束の二時間は待った。時計なんかないんだから私達の体感が全てだ。


『身体強化』


どうか筋肉痛の期間が短く済みますように。


『螺旋貫通峰』


うん。やはり私の不動と校長の技を合わせると最強だ。何でも突き通すぞ。


何度も突きを入れて、下の方にお椀を伏せたような穴を開ける。




あー疲れた。


「じゃあ先に入るね。」


「ええ、中から開けられそうだったら開けてちょうだいね。」


「オッケー。」


ガサゴソ。床を這って内部に潜入成功。内側から開けられ……やっぱ無理か。ボスが生きてる間は開かないよな。


「ダメだね。やっぱ開かないよ。」


「ええ、分かったわ。」


アレクをこんな所を這わせるのは嫌だが外で待たせるのはもっと嫌だしね。アレクのスカートはミニだからきっと後ろから可愛いらしい下着が丸見えになるんだろうな。誰もいなくてよかった。




さーて、あいつらはどうしてるかな。




「何ぃ!? 急に強くなりやがったぁ!? バカな!? もう少しだってのに!?」

「今までの傷まで治ってやがる! 一体なぜ!?」

「げひゃひゃぁぁーー! 斬る斬る斬ったらぁーー!」

「くっそ、やべぇ! 隊長ぉ! どうすんすかぁ!?」

「バカ! 離れんな! 陣形が!」


「退くな! やることは変わらん! まずは足を奪え! 次に腕! それからトドメだ!」


ボスにしてはあんまり大きくないな。身の丈三メイルってとこか。その分素早いのかな。赤兜の奴ら、中々剣が届く間合いにまで入れなくて苦労してやがる。しかも三人ほどすでにムラサキメタリックの鎧に装備を換えてるし。さすがのウェアタイガーのボスもあの鎧には傷を付けられないようだな。


「ガウガウ」


おっ、カムイも来たか。もう少し待とうぜ。あいつらがどこまでやれるか見物してからな。


「スタナー!? おまっ!?」


あ、一人ぶっ飛ばされた。すごい勢いで壁際まで。さすがウェアタイガーのボス。鎧がムラサキメタリックじゃなければ胸に穴が空いてたんだろうな。


「おかしい! いくら何でも強すぎる! 全員アレを飲め! 俺が時間を稼ぐ!」


おっ、さすが隊長。頑張るじゃないか。で、何を飲むんだ?


「あら、あれってもしかして『倍斬人バイキリヒト』かしら? 魔力がぐんと減る代わりに力と速さが二、三倍に強くなるって。」


「へー、そんなのがあるんだ。魔力が減るぐらいなら身体強化を使えば良さそうなものだけどね。」


「そうはいかないわよ。だって普通の身体強化って頑張って魔力を込めてもいいとこ三割増しだわ。カースのように無茶な魔力を込めて何倍もの力を出せる人ってかなり稀よ?」


まあ私の場合その分の筋肉痛が酷いんだけどね。だが、これを繰り返して苦痛を乗り越えれば体はどんどん強くなるって寸法だ。たぶんね。ちなみに今だってもうすでに筋肉痛が来てる。これ絶対ただの筋肉痛じゃないよな。あぁ痛い……


「おっしゃあ隊長代わるぜ! 隊長も飲めよぉ!」

「おらぁいくぜウェアタイガー! 赤兜騎士団なめんなよぉ!」

「ききききき斬る斬る斬ってぇぇーー!」


おっ、しかもついに全員ムラサキメタリックの鎧に換装しやがった。魔力がなくなるんならムラサキメタリックでいいよな。どうせ魔法が使えないんだから。あ、そっか。ムラサキメタリックの鎧なんか着てたら身体強化も使えないもんな。そりゃ薬飲むわな。


それから防御無視でウェアタイガーを取り囲み剣戟の嵐を浴びせる。細かい傷はたくさん付くがとても致命傷とは言えそうにない。基本的な動きの速さが違いすぎるからな。しかもウェアタイガーはさらに強さを増す。だって部屋に新たに四人も入ったんだから。単純計算で十六倍か。さあて、勝てるのかな?


「て、てめぇ……どこから……入り込みやがった……」


おお、さっきぶっ飛ばされた奴か。意外に元気だな。


「あっちから。言っただろ? 二時間だけは待つって。さっさと終わらせろよな。つーかお前もこんなところで遊んでないで加勢してやれよ。仲間の危機だぞ?」


と言ってる間にまた二人ほど吹っ飛ばされた。いくら鎧が丈夫でも中身が耐えられるのかねぇ。


「くうっ、てめぇのことは後だ! うおおおー! 今いくぞエトウェル!」


「スタナー! 後ろに回れ! 挟むぞ!」


他の奴らもこっちに気付いたようだ。しかし今はそれどころではない。必死に戦線を支えようとしている。残り、四人。


「うおおおおーーー!」


おお、隊長が決死の覚悟で剣を突いた。相討ち覚悟か。だが、ウェアタイガーは大振りの右爪を隊長の側頭部に叩き込んだ。側転をするかのように転げていく隊長。普通なら首の骨が折れてるだろうが、やはりムラサキメタリックの鎧は強力だねぇ。


「今だぁーー!」

「おおよぉ!」

「くそがぁ!」


残り三人も同じように剣を構えて突っ込んでいった。隊長同様に殴り飛ばされたのが二人、最後の一人がついにウェアタイガーの背中に剣を突き立てることに成功した。結構深く刺さってるぞ。


「今だぁー! みんなやれぇーー!」


返事はない。立ってるのはお前だけなんだよ。


「そんなっがぁばっ!」


振り向き様のウェアタイガーに裏拳で横顔を殴られて、隊長と同じように横回転で転げていった。


『バオオオオオオオオオオオォォォォーーーーーーー』


おや、勝利の雄叫びかな? でも悪いね。せっかくのチャンスだからね。このまま死んでくれ。


白榴弾びゃくりゅうだん


こいつはかなり素早いからな。アイリックフェルムのホーミング榴弾で範囲攻撃。ミンチになりな。


よし、終わり。さぁて素材は……うーん、虎の毛皮か。敷物にいいかも。でもうちの自宅には合いそうにないよなぁ……

いずれ作る和室にも……合わないしなぁ……

あ、お土産にいいかも知れないな。


さてと、赤兜の奴らは生きてるかなー。

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