第1128話 スライムの変
スライムと
今すぐスティクス湖に行って全滅させてやろうかと思ったが、少し待とう。王都であの毒を手に入れてから……
よし、今日のところは様子見だけにしておくか……
「さて、じゃあアレクとクロミは薬草集めを頼んでいいかな? 僕はちょっとスティクス湖に行ってくるから。」
「いいわよ。さっさと殲滅させてくるの?」
「いや、様子見だけ。禁術の毒対策にどうにか利用できないかと思ってさ。」
「スライムって怖いよねー。ウチらの敵じゃないけど。」
ある程度の魔法が使えるなら勝てるよな。でも相性次第って面もあるから普通の魔法使いにはちょっと辛いけどね。
クタナツを出てグリードグラス草原の東側にアレクとクロミ、それからカムイを下ろす。このメンバーなら無敵だね。
「じゃあ二、三時間ぐらいで戻ると思うから。後でね。」
「ええ、いってらっしゃい。」
ぬふ、アレクにその言葉を言われるとウキウキしてしまうな。あ、ほっぺにチュッとされた。ぬふふ。今夜は実家じゃなくて、どこかの宿に泊まろうかな?
さて、私はコーちゃんとスティクス湖の上空に到着した。うーん……見た感じヤバいね。
一年ちょい前にほんの数十株ほど移植したイービルジラソーレが……恐ろしく増えてやがる……
まるでスティクス湖を警護するかのようにギチギチと、湖岸に沿って……どうしてこうなった……
スライムは?
本当に湖そのものがスライムになってしまったのか?
魔力庫からオークを一匹ほど取り出し、湖に落としてみる。
あー、スライムだわ。見る見る溶かされてるわ。嘘だろ……たぶん琵琶湖ぐらいあるんだぜ? これが全部スライムだと……?
『浮身』
魔力のごり押しで持ち上げてみようとするが、びくともしない……
確か琵琶湖の水量は三十立方キロメートルぐらいだと聞いたことがある。それって重さに換算すると……三百億トン?
無理だろ……
数万トンの重量ですら浮かせることもできる私だが……億トンって……そりゃあ無理だよ……
くそ、水とスライムでは密度が違うし、ここと琵琶湖の体積だって違うだろうけどさ。
もしも、マジでここのスライムが三百億トンもの重量を持っているのなら、襲ってきたら……クタナツはどうなるんだ……?
とりあえず放置だな。いくら何でも数字が異常すぎる。天文学的数字ってやつか? さすがにそこまでではないか。
これだけの重さがあるんならおいそれとは動けまい。ここからクタナツまでは直線で四、五百キロルってとこだろう。
普通のスライムなら人の歩みとそんなに変わらないから……単純計算で時速一キロルだとすると……クタナツまで五百時間。二十一日か。まあ今すぐ移動を始めるわけでもないし、そもそも真っ直ぐクタナツを目指すとも限らない。
うおっと、こんな上空まで触手っぽいものを伸ばしてきやがった。生意気なスライムめ。『乾燥』をくらえ。
うーん、やっぱスライムには乾燥が効くね。
それにしてもスライムとイービルジラソーレが共生している理由……見ても全然分からん。スライムに目の前の獲物を食わない知能なんてあるのか? 浄化槽スライムが自身に魔力を流した家主を襲わないことと似てる気はするが。
とりあえず広範囲に乾燥を使ってみてやろう。どの程度魔力が必要かの判断もしないといけないしな。
『乾燥』
全魔力の半分ほど費やしてみたが……消滅したスライムはたぶん一割もない。大き過ぎるんだよ……
一部がごっそり崩れて湖底が見えたが、やっぱここってかなり深いよなぁ。私がめちゃくちゃやってしまったからなぁ。ノヅチが現れて吸い込んでくれないかなぁ……
吸い込む……あ!
またまたアイデア!
フェアウェル村の村長直伝のあれを使ってみよう!
『
そして現場から逃げる!
うおおお……これはやばい光景だ……
見る見るスライムや砂、そしてイービルジラソーレが根こそぎ吸い込まれていくじゃないか……あれってどこに行くんだろう?
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