第1117話 カムイ VS カカザン 再び
「も、もう、カースったら朝から……嬉しい……」
「もう昼だよ。後でまた蟠桃を取りに行こうよ。また食べたいしね。」
「いいわね。今度こそカムイは勝てるかしら。」
「大人になったカムイのお手並拝見だよね。」
ちなみに昼食は村長から何か作ってくれと頼まれたのでアレクが作った。やはり旨い。
出かけようとしたら村の外に大きな魔物が四匹も転がっていたのが気になった。たぶん昨夜来たんだろうな。そして夜の警備担当に倒されたと。今から解体ってとこかな。
「あれってジャイアントシルバーコングかしら? かなり大きいわね。」
「それっぽいね。あんなに大きくてもやっぱりエルフの敵じゃないんだね。」
だいたい二十メイルってとこだろうか。ビルだと五、六階ぐらいかな。あんなのがウヨウヨいる山岳地帯ってやっぱ危ないねえ。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
あーもう。二人とも食べたいのか。仕方ないなぁ。さっき昼飯食べたばかりなのに。まあいいや、頼んでみるか。
「おーい。ごめんよ。それを少しこの子達に食べさせてもらえない?」
「ん? 坊ちゃんか。ああいいとも。さあ精霊様、お好きな部位をどうぞ。狼殿もな」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんは腹に噛みつき、カムイは大腿部に噛みついた。近くで見るとこれまた大きいよなぁ。
「お出かけかい?」
「ああ、ちょっと蟠桃を捥ぎにね。あまりに美味しかったからさ。」
「すげえ坊ちゃんだぜ……さすが精霊様に慕われているだけあるな」
「たまたまさ。それに両親が偉大だからかもな。師匠にも恵まれてるし、幸運だな。」
それを言うとアレクとも出会えたし。私はついてるね。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
満足したかい? それなら行こうか。ところでカムイ、またあいつと戦いたいのか?
「ガウガウ」
今度は勝つって? それはいいけど殺すなよ。どうもあの猿がいないと蟠桃が上手く育たない気がするんだよな。あれだけ旨い実なんだから、強い番人がいなくなったらたちまち食い荒らされて終わりだよな。二度とあそこまで育たない気がする。
それともあの猿が死んだら他の猿がボスとなって手入れしたりするんだろうか?
到着。いた。エンコウ猿の族長カカザンって言ったよな。
「ガウッ!」
カムイが行ったぁ! ミスリルボードから飛び降りたと思ったらもうカカザンの目の前だ。
「ガウガウ」
「キキッ」
何か話しているが理解できるはずもない。
そして戦いが始まった……ように見える。
カムイの動きが速すぎて何も見えない……地面で草や土が舞っている辺りを動いてるってことは分かるが……
一方カカザンは手足を振り回してカムイを攻撃しようとしているようだが、一向に触れることもできない。いや、それどころか伸ばした手足が徐々に傷付いている。カムイが攻撃をしているのか?
「キキーィ!」
おっと、ボス猿がキレたか? それにしては逃げているようだが……どこに向かっているんだ?
カムイの見えない攻撃を食いながらもどこかを目指すボス猿。カムイはカムイで致命傷を与えられないようだが。それとも私の言う通り、殺さないようにしているのだろうか?
むっ、カムイの姿が見えた。お座りのポーズで待っているではないか。余裕かましてんのか?
一分も経たないうちにカカザンは戻ってきた。手にはごっつい棒、いや木の枝を持っている。もしかして蟠桃の枝とか? 鬼に金棒状態だったりするんだろうか。当たらなければどうということはないのだろうが。
そうかと思えばカカザンの真の目的は枝を振るついでに土や砂を巻き上げて広範囲を攻撃することか。やるもんだね。それなら少しは当たるのではないだろうか。
むっ、それだけじゃない! そこらから石を拾ってはノックをするかのように打ってるじゃないか! 目的は石を飛ばすことではなく、石を砕いて散弾のように攻撃することか! 生意気に頭を使うじゃないか。カムイのように超高速で動いてるってことは、ちょっと当たっただけでも大ダメージになるってことを分かってるってことか?
「ガウゥ!」
へぇ。カムイのやつ、そんなカカザンの腕に噛みつきやがった。しかもその勢いでカカザンを持ち上げて振り回している。自分より大きな相手をよくもまあ……
そのまま勢いをつけて……真上に放り投げた!? さすがにカカザンの手からは枝が離れているが、意識を失ったようには見えない。
あれ? カムイはどこに行った? 少し目を離した隙に……いたっ! カカザンの上をとってる! いつ飛び上がったんだ!?
そして、後ろから奴の首に噛み付いて……顔を下に向けさせて……落下した……
なんてエゲツない……ボス猿のやつ、顔から地面に衝突したぞ……しかも落下の勢いで牙を首に食い込ませる作戦!?
やったか!?
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