第1025話 カースとアレクサンドリーネの週末

さて今日は日曜、ではなくパイロの日。だいぶ元気になったぞ。そうなるともう動き出してもいいだろう。よし、楽園に行こう。組合長は……放っておいていいだろう。帰りたくなったら自分で勝手に帰るだろうさ。


よし、コーちゃんカムイ。行くよ!


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」




到着。いつぶりかな。軽く家の中を掃除してから外壁作業を再開しよう。中途半端にほったらかしだもんな。ちなみにカムイはコーちゃんを連れてノワールフォレストの森に行ってしまった。修行をしてくるそうだ。





あっと言う前にケルニャの日。今日の放課後はアレクに会える。外壁は北側が全て、西側が半分終わった。一辺が八キロルもあるもんな。そうそう終わらないよな。じっくりやろう。


なお、カムイはしばらく戻らないそうだ。コーちゃんだけが戻ってきてくれた。あいつも頑張るよな。どこまで強くなるつもりなんだよ……




ところ変わってここは領都。魔法学校の校門前だ。いつも通りアレクを待つ。


「ピュイピュイ」


え? コーヒーが飲みたい? 珍しいね。ならたまにはカファクライゼラに行くのもいいよね。アレクが来るまで待ってね。


「ピュイピュイ」


まだかなまだかなー。もちろん伝言つてごとの魔法はもう使っている。



「カース!」


来た!


「アレク!」


いつものように私の胸元に飛び込んでくる。すっかり元気になったようだ。一安心だな。あぁいい匂い。


「会いたかったわ。カースに聞きたいこともあったし。」


「何かな? じゃあカファクライゼラに行こうよ。コーちゃんがコーヒー飲みたいんだって。」


「たまにはいいわね。さ、行きましょうか。」


そして私の腕に腕を絡めてくる。いつものことだがこの温もりが嬉しい。


「ピュイピュイ」


コーちゃんはそんな私達の首に巻き付いた。一本のマフラーを二人でするカップルだな。


さて到着。ここに来るのはいつぶりかな。子供武闘会以来か。何を飲もうかな。




「ねぇカース、娼館に行ったそうね?」


この話、アレクにまで知られてるのかよ。誰が見たんだろうか。


「行ったよ。ドノバン組合長を送ってね。もちろん中に入ってはいないよ。」


「やっぱりね。同級生の子達がうるさくて。カースはそんな所に興味ないって言っても誰も信じないの。バカな子ばっかり。」


「先週はリゼットも来たよ。娼館に行ったのなら自分にもチャンスがあるかもと思ったんだって。」


「リゼットも健気よね。実は私もソルのことを考えてしまったの。だからってカースの意思を曲げようなんて思わないから。私、自由なカースが好きよ。」


「アレク……」


自由な私が好き……何回言われても嬉しい言葉だ。ありがたいことだ。



「相変わらず仲良いねぇ?」


「うおっ、エロイーズさん!? お、お疲れ様です!」

「お疲れ様です!」

「ピュイピュイ」


びっくりした。さっきまでいなかったよな? いつの間に?


「さっきからいたさぁ。周りが見えないぐらい夢中かい? 妬けるねぇ?」


妬ける? どこにそんな要素が。


「あの、エロイーズさん、アイリーンはどうしてますか?」


「ふふ、アイリーンかぁい? いい子さぁ。とても覚えがいいしねぇ。」


アレクも心配だよな。それより何の覚えがいいってんだよ……


「あの、元気にしてるんならそれでいいんです……」


マジでアレクも心配だよな……


「それよりエロイーズさん達はしばらく領都に滞在するんですか?」


「あぁ、当分はここだねぇ。でかい仕事になりそうだしねぇ。」


例のトンネルがもう動き出すってのか? 私はまだ聞いてないぞ。


「大変そうですね。死なないでくださいよ。」


「なんだいカース? アタシの心配してくれるのかぁい? いい子だねぇ。また宿に来るんだよぉ?」


「また? カース?」


おっ、やきもちアレクか。かわいいなぁもう。


「この前のあれだよ。アイリーンちゃんの時の。知ってるくせに。」


「そ、そうだったわね……」


アレクったら。側室は勧めるくせに妙なところでやきもち焼くんだから。かわいい。


「あーあぁ、付き合ってらんないねぇ。カース、払っときなぁ。」


「いいですよ。その代わりアイリーンちゃんを頼みますね。」

「よろしくお願いします!」

「ピュイピュイ」


むしろエロイーズさんに奢れるのは光栄ってもんだ。喜んで払うさ。あー、コーヒー美味しい。



ところでアレクはもう一週間もすれば冬休みだ。少し王都に行くことにはなるが、ほとんどを楽園で過ごそう。王都では面倒な用事が二件ほどあるが、ささっと済ませて後はバカンスだ。ああ楽しみ。

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