第879話 爆龍鬼炎党

三人を尋問しながら待っていたら爆なんとからしき奴らがやって来た。


「てめーか! モミゲ達をかわいがってくれた奴は!」

「何調子コイてんだか知んねーけどよぉ! おめぇ死んだぞ!?」

「爆龍鬼炎党だぞ!? 分かってんのか? 分かってんのかよぉ!?」


「よく来たな。お前らも紫の装備を持ってんのか? 素直に置いていけば許してやるぜ?」


まだあったら驚きだが……


「あぁ!? 紫の装備だぁ!?」

「てめーみてぇなガキにゃあクソ無駄じゃぁ!」

「欲しけりゃとってみろや!」


持ってんのかよ。欲しけりゃとってみろって、さっき私も言ったような。まあいいや。


『落雷』


あっさり全員気絶。では身体検査といこうか。もちろん近寄る気もなければこいつらなんかに触れる気もない。魔法って便利だわ。




その結果、グリーブだったかな脛当て部分の鎧が左右、紫のナイフが一本見つかった。しかし残念なことにグリーブはムラサキメタリックではあったが、ナイフはただ紫色ってだけだった。でも全部没収。


さて、それでは尋問タイムといこうか。


氷で断頭台を作って、いつものように……


「おい、起きろ。」


頭を蹴飛ばす。まずは一人起こそう。


「ぐうっ……何が……」


「ほれ、このロープ持ってろ。離すと死ぬぞ。」


「なっ、何を……」


いつものやつだ。手を離すと上から鉄の杭が落ちてきて体を貫くアレだ。即死じゃないのが逆にきついかもな。


「てめー! 俺らにこんなことして! タダで済むと思ってんのか!? 俺らぁよぉ!」


「どうでもいいが手を離すとマジで死ぬぞ? 俺としてはお前が死んだら他の奴から話を聞くだけだがな。」


「けっ、こんなモン俺の魔法で……」


おっ? 魔法で解決する気か?


「なっ! 魔法が……使えね……」


「使えねーだろ? 拘禁束縛だからな。お前が動かせるのは腕と口だけだ。話したくなったら言え。聞いてやらんこともない。」


そもそもまだ何も質問してないんだけどね。


「どうかなエルネスト君。こんな奴らには殺す気で対応しないと話もできないよ。」


「う、うん……で、でもちょっとやり過ぎじゃない?」


「そう? それなら別にやめてもいいよ? ここでやめたら全然解決にならないとは思うけど。」


「そ、そうかな……あの人達もきっと反省してるんじゃ……」


うわぁ……これは悪い意味で貴族らしい。人を信じる美しい心を持っているんだな。


「それならパーティーで相談してみたら? 僕は続けてもやめてもどっちでもいいよ。」


「う、うん……そうするよ……」


うわぁ本当に相談するのかよ。リーダーだろ? 私を呼び寄せた功績を誇れよな。俺が呼んだら魔王はいつでも来るんだからな! って具合に。ここに来たのはやはり無駄足だったか……




「お、おい! も、もう腕が限界なんだよ!」


「だから?」


「た、助けてくれよぉ! 何が聞きたいってんだよ!」


「話したいのか?」


「は、話す! 何でも聞いてくれよぉ!」


「ふーん、 話したいのか。どうしようかな、もう聞く気分じゃないんだよな。どうせお前ら偽勇者について何も知らねーんだろ?」


「お、思い出すからぁ! 話すからぁ!」


無理じゃん。もう忘れてるって言ってるじゃん。


「仕方ねーな。約束だ。聞いてやるから正直に話せよ?」


「あ、ああっ。うぉっく、ぎゃああああー!」


あ、バカ、契約魔法のショックで手を離しやがった。あーあ。


と、思ったらまたもやエルネスト君のストップが。底無しのお人好しなんだね。


「カース君、もういいよ。君はよくやってくれた。もう十分だよ。これからは僕達だけで力を合わせて頑張るから……」


「そう。エルネスト君がいいならいいよ。ついでだからこいつの身柄は少しだけ預かるよ。聞くだけ聞いておこうと思ってね。」


「うん、ごめんね……」


さてと、せっかくかけた契約魔法だ。命拾いした記念にあれこれしゃべってもらおう。


『氷壁』


野郎と密室に二人きり。気分が悪いな。ついでに周囲に『消音』


「さてと、紫の装備の出所について話しな。」


「酒場に、全身紫の勇者って奴が、いたからおだてて遊んでたら、そいつの装備を格安で売ってくれた……どうせ粗悪品だろって、思ってたら、魔法は防ぐし、切れ味はいいし……魔力庫には収納できないけど……」


「五年前か?」


「そ、そう、です……」


「なぜエルネスト君達にタカリかけてんだ? 大して儲からないだろ?」


「た、頼まれた、です……」


「誰に?」


「名前は分からん、ません、が、黒髪のいい女だった、です……歳は多分二十四、五ぐらい……」


黒髪ねぇ……イボンヌちゃんも黒髪だけど。


「なぜそんな依頼を受けた?」


「い、いけ好かない貴族に嫌がらせ、できるし、女からの報酬もいいから、です……」


あらあら。エルネスト君に冒険者を辞めさせたい奴でもいるのかね。どうでもいいや。私はもう帰るし。


消音解除。


「エルネスト君、終わったよ。意外な情報を持ってたから知りたいなら拷問したらいいと思うよ。じゃあ僕は帰るね。」


「うん、今回はありがとう。それで報酬だけど、何がいい?」


「いや、途中でやめたわけだからいらないよ。」


「いや、そんなわけには……」


「この紫の装備が手に入ったしね。特に欲しいと思えるものもなかったし。」


「そうなんだ……無駄足を踏ませて、ごめんね……」


「いいよいいよ。じゃあエルネスト君。くれぐれも元気でね。」


「うん、カース君も。今回はありがとう!」


さて、これでもう用無しだ。面倒だが騎士団詰所に寄ってから帰るとしよう。それにしてもエルネスト君は前途多難だな。可哀想に。

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