第560話

この日はそれから王都でランチをした後、ブラブラとデートをしてから帰った。スティード君とサンドラちゃんもデートをしていたらしい。

そして夕食の時間、もちろんゼマティス家は全員集合している。


和やかに夕食が終わろうとする頃。

「おじいちゃん、陛下に献上したいものがあるんですが、届けてもらえないですか?」


「おお、カースはえらいのぉ。何を献上するんじゃ?」


「ヌエです。たぶん普通サイズだと思います。」


全長五メイルはたぶん普通サイズだ。


「何よアンタ、そんなもんどこで獲ってきたのよ!」


「ムリーマ山脈だよ。動きがかなり速くて大変だったよ。ワイバーンを狙ったんだけどすごい集団だったからやめたの。」


こんな時に真っ先に突っ込んでくるのがシャルロットお姉ちゃんなんだよな。


「ムリーマ山脈まで今日だけで往復してきたってわけね……」


「さすがカースじゃ。では見せてくれるか? ワシから陛下に献上するにも、色々と確認せねばならんからの。」


それから私達は庭に出てヌエを見てもらった。


「ほお、中々の大きさじゃの。それにこの鮮度の良さときたら、カースの魔力庫は高性能じゃ。」


おじいちゃんはそう言いながらもあれこれ魔法を使って何かチェックをしているようだ。

ちなみに全長五メイルぐらいだろうか。


「問題ないじゃろう。このまま検査を経て来週には陛下に献上できよう。カースや、よくやった。お前がそこまで忠義の心を持っているとは、ワシは嬉しいぞ。」


「ありがとうございます! 今回陛下には色々と良くしていただきましたので感謝の気持ちです。」


祖父母は私を偉い! といった目で見ているが、お姉ちゃんは、こいつまたあざとい真似を! と言いたそうな顔で見ている。当たり前だ。忠義の心なんかあるわけないだろ。


「やっぱりカース君はすごいね! もしかして一撃?」


スティード君が素直な賞賛をくれる。嬉しい。


「トドメは一撃だけど、それまでが大変だったんだよ。」


そう言って屋敷内に戻りティータイムがてら状況を説明する。ついでにドラゴンの話もしつつ牙を見せる。みんな驚いてくれたようだ。ドラゴンに比べたらワイバーンは子猫。ならばヌエは親猫ぐらいだろうか?


「寝ているドラゴンの目の前に降り立つだなんて……無茶したわね。無事でよかったわ。」


やっぱりおばあちゃんは優しいな。


「どうせならドラゴンも討伐すればよかったのに。アンタらしくないわね。」


お姉ちゃんは無茶を言うよな。私らしいって何だ? バーサーカーか?


「僕と父上も夏はムリーマ山脈に篭ってたんだけどドラゴンには出会えなかったよ。いいなあ。」

「ワイバーンは何匹か見つけたが、素材が残るような倒し方ではなかったからな。今思えばもったいないことをしたもんだ。」


ガスパール兄さんとグレゴリウス伯父さんは夏休みの間ずっと修行をしていたんだよな。素材を無視して倒しまくったってことかな?


それよりもいよいよ明日は王国一武闘会、一般の部だ。初日は魔法なし部門か。どんな試合になるのか楽しみだ。おじいちゃんのコネで私達はいい席に座れることになっている。楽しい一日になりそうだ。





ドラゴンと会えた記念すべき日。そしてその夜。私とアレクは声を殺してスローなラブを何度も繰り返した。それは真夜中過ぎまで及んでしまった。

普段は消音の魔法をかけるのだが、今夜はなぜか消音なし。時には我慢するのもいいものだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る