第387話

そんな誕生日パーティーの翌日、私は遅めの朝食をとり再び楽園エデンへと向かった。今日からは整地だ。聖地を整地……ププッ……


整地と言っても私にレベルなど見れるはずもない。水を流したりしてだいたい水平ならよしとする!


面倒だ……かなり地道な作業だ……

何か魔法でスパっと終わらせる方法はないか……


『風斬』


一ヶ所ほど水平面を出し、そこに沿うように風斬を使う。その面より高ければ削れて低ければ何も起こらない。低い面は少しずつ埋める。埋めたらミスリルギロチンで押し固める。

レーザー水準器が欲しいところだ。



このように風斬で整地すること三日。それなりにフラットな地面ができた。次は建物の設置予定地だ。ここは基礎からしっかり作らなければならない。




今日はアグニの日。週末まで残り四日。どこまでできるだろうか。


基礎工事と言えば深く掘って杭打ち。その上に鉄筋コンクリートが定番かな?


杭は相当長さが必要なイメージだが城壁と同じく十五メイルにしておこう。杭を打つ前にまずは地面をしっかり掘らなければ。


まずはミスリルギロチンが入る程度の広さの穴を掘る。深さは五メイル程度としよう。そうした後、土中を水平にギロチンで切り進み、切り離した土を浮身で無理矢理持ち上げる。

拘束隷属の首輪を付けたままなので、かなり魔力を消費してしまう。これはきつい!


こうして夕方までかかって百メイル四方を掘り起こすことに成功した。明日はここに杭を打とう。



サラスヴァの日。まずは杭を作る。使う魔法はもちろん『鉄塊』

近辺の鉄を消費するため一ヶ所で使い続けることは不可能らしい。すでに城壁用にたっぷり使ってしまったので、離れた場所で作成せねば。


ヘルデザ砂漠をうろつきながら鉄塊で杭を作る。時々魔物も倒して魔石も確保。じわじわと首輪の効果が重くのしかかってきた。しかし外さない!

この首輪が無効になるぐらいに鍛えて、それでもキアラに抜かれたら、その時はもうそれでいいと考えよう。


用意した杭は約五百本。多いか少ないかは分からないが、二十平方メイルに一本の計算だ。実際には中心部に多目に打つつもりではある。


昼ご飯を食べていよいよ杭打ちだ。コーちゃんが逃げようとしているが、今日は大丈夫。『消音』を使うよ。

翌日までかかって杭打ちが終了。



暫定最終日、ケルニャの日。明日の朝には領都に着きたいな。できるところまでやろう。


掘り下げた所に大岩を敷き詰める。少し高所から落とし地盤固めも兼ねる。ここからコンクリを打ちたいのだが、時間切れだ。大岩敷きだけで夕方になってしまった。岩石砂漠地帯と何度も往復したから仕方ない。今回はここまでだ。今からだとクタナツには入れないからバランタウンに泊まろう。夜でも迷わず到着できるようになったのはオディ兄に貰った羅針盤のお陰だ。




到着。現在の時刻は夜八時ぐらいかな。

明日の朝、アレクママから手紙を受け取って領都に向かうとしよう。


この宿『戦場の出城亭』は以前スパラッシュさんと泊まったんだよなー。ノミが居たんだよなー。絡んできた四人組に酒を奢ってやったんだよなー。


「一人です。部屋はありますか?」


「二人部屋しか空いてないよ。払えるならいいよ。」


「ではそこで。食事もお願いします。」


銀貨六枚だった。食事はやはりオークのジンジャー焼き定食。美味しいぜ。今日は盛り上がってないな。吟遊詩人もいない。


「お姉さん。これでここの全員に酒を飲み放題にしてもらえる?」


そう言って私は金貨十枚を出す。


「いいわよ。みんなー! 今から飲み放題よ! 好きなだけ飲んでいいわよ! フィーバーしなさーい!」


冒険者達は大騒ぎだ。やはりこうでなくては。こうやって場が盛り上がると何処からともなく吟遊詩人がやって来るのがお約束らしい。当たり前のような顔してリクエストを聞いてきたので『英雄スパラッシュの歌』を頼んでみた。あるのか?


『言わずと知れた紅の

五尺伸びたる毒の針

仕留めた標的棘の数

潰した盗賊種の数

針凶々しく血の雨の降る

おおスパラッシュの魂よ

高潔なること憂いなし

ああスパラッシュの御心よ

安らかなること限りなし

ルイネス村の下層民

フランティアの救世主

一代男爵ド・ハントラ』


何ていい曲なんだ。泣けてくる……

お捻りは奮発しよう……

周りはさらに盛り上がっている。こいつら聴いてなかったな?


でもみんな楽しそうだからいいや。スパラッシュさんフォーエバー。

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