第369話

まあいい、金が欲しいなら貸してやろう。


「ではお客様、いかほどお要り用ですか? お一人様金貨二十枚なんてどうですか?」


どいつもこいつも上手くいったって顔してやがる。いつも新人相手にこんなことしてんだろうな。


「いいぜ〜それだけで勘弁してやるぜ〜」

「何かあったら言ってきな。面倒見てやるからよ」

「いい金持ってんな。まだあるんだろ?」

「早く出しな」

「始めから素直にしてりゃあいいんだよ」


「では約束ですね。皆さんに金貨二十枚をお貸しします。利息はトイチの複利。いいですね?」


「おう、いいぜっのぉ」

「おお、貸せやゅだ」

「? いや……」

「はいはい、そのうち返すっど」

「いいぜ、返さねぇぅとっ」


くそ、一人掛かってない。用心深い奴がいたか。


「そちらのお客様は必要ありませんか? ではお貸ししないということでいいですね?」


他の奴らも今更気付いてざわざわしてやがる。もう遅いぜ。


「ああ、やめとくわ。俺は帰る。お前らあんまり新人をいじめてやるなよ。」


ちっ、大物ぶりやがって。


「さて、お客様。分かったと思うが今のは契約魔法だ。十日ごとに少しずつ返済した方がいいぜ。」


罰則をつけ忘れたな。まあいいだろう。

おや? いつもなら騙したな! 生意気な! とか言われるのに?


「ボウズ……お前の名前は……?」


「金貸しカース。十等星だが新人じゃないぞ。」


「ちっ、クタナツのガキか……ツイてねーぜ」


「何だ? 俺のこと知ってんのか?」


「名前だけな。クタナツ者には手を出すなってのが俺らの常識だ」


今さら何言ってんだ? クタナツの民が強いのは常識だろ。


「それより何で俺が金を持ってると思った?」


「あー、さっき第二倉庫に行ってただろ。あそこは新人専用だ。わざわざあそこに行ったんなら獲物をたんまり狩ってきたってバレバレだぜ」


「なるほど。まあいいや。ほれ金貨二十枚だ。大事に使えよ。」


四人に金貨を二十枚ずつ渡す。貸付残高は着実に増えている。将来安泰だな。


ようやくお昼だ。腹が減ったぞ、何を食べようかな。

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