第363話

少し歩いて、それからミスリルボードに乗りカスカジーニ山の山頂に到着。


「いきなり山頂に来てみたけど、ゴーレムってどの辺りによく出るんだろうね。」


「定番なのは七合目から山頂にかけてってとこね。この山だと山頂は狙い目よ。」


「ならやるよ。」

『土塊』『土塊』『土塊』


「ピュイピュイピュイ!」

コーちゃんもハイになっている。


「さて、後は待つとしようか。どんなゴーレムが来るのかな。」

「相変わらずメチャクチャするのね。ドンドン来そうで少し怖いわね。」


大抵三十分も待てば大物が来るはすだが……

十分も経たずに来た! 私の魔力が増えているからだろうか。


「実験するね。少し待ってて。」

『金操』


金操でいきなり魔石を抜き取ってみる……

成功!


魔力は切れていない。それどころか七割は残っている。もちろん首輪も外していない。私も成長したものだ。


「あきれたわ。魔石に金操って……あんな大きいブロンズゴーレムが無傷で……」


「上手くいったよ。昔これをやって山頂で魔力が空になったあげくゴブリンとコボルトに囲まれて困ったんだよね。」


「困ったで済んだのね。やっぱりカースよね。さあ次が来たわ。見ててね。」


アレクは的確に魔石を氷弾で打ち抜くことで次々とゴーレムを仕留めていく。私は片っ端から収納していく。アレクの上達ぶりに嬉しくなってしまう。


たまにゴーレム以外に熊系の魔物やゴブリンなども襲ってきた。それでもアレクは慌てることなく堅実に対処をしている。本当に上達しているではないか。


そうして魔法を使い続けること一時間、さすがのアレクにも疲れが見えてきた。魔力が切れないのはすごいことだ。地道に修練を積んでいることが伺える。


しかも金属、岩石のゴーレムや強靭な毛皮を持つタイラントベアにまで通用するほどに氷弾の威力が上がっている。本当に頑張っているんだな。少し泣きそうだ。


よし、私も協力しよう。

『火球』『火球』『火球』

これでまた違った魔物が寄って来ることだろう。


「ギャワワッ!」

コーちゃんが警告してくれている!


来た! あれはガルーダか!?

人間のような体に大鷲のような頭と翼。鋭い鉤爪と嘴には要注意だ。全長は三メイルぐらいか、動きが速い!


「とんでもない魔物を呼んでくれたわね……」

『氷弾』


当たったが……弾かれて効いてない。そんなに頑丈には見えないが……


『氷壁』


危ない、がアレクの防御が間に合った。危うく嘴で貫かれるところだった。でも発動速度がしっかり上がっているため安心して見ていられる。


しかしその氷壁もすぐに砕かれる。


『氷弾』


アレクが一気に五発の氷弾を放つと、一発が翼を貫いた。他の四発も当たりはしたが弾かれている。なるほど、どうやらガルーダはテクニシャンのようだ。弾丸が当たる角度を調整し致命傷にならないように往なしているのか。


おっ、アレクを警戒して離れたぞ。何かをしようとしているのか? しかしアレクは間髪入れず『水球』五発乱れ打ちだ。


だめか、全て避けられた。距離をとられたらあの速さを捉えることは難しそうだ。


ふいにガルーダが妙な叫び声を出す! 甲高く耳障りな、まさか『怪鳥音』!?

気の弱い者が聞いたら気を失うと言うあの?

もちろん私達には効かないが。


その隙にガルーダの頭上からは巨大な水球が落ちる。先程避けられた五発をまとめたものだ。アレクの魔法は避けても終わりではないのだ。油断したな?


衝撃で気絶したのだろうか、そのまま水球に閉じ込める。アレクの勝ちだ。少しサービスして『落雷』とどめを刺しておく。


「お見事! 頑張ったね! すごかったよ!」

「ピュイピュイ」


「ありがとう。勝ててよかったわ。氷弾が効かなかった時はどうしようかと思ったわ。」


「魔力量に発動速度、そして正確さ。成長したね! 修練の跡を感じたよ。さあ、これ以上大物が来ないうちに帰ろうか。」




こうしてアレクは大量の素材を納品して大金をゲットした。それ以上にガルーダとの戦いはきっといい経験になったことだろう。

私はブロンズゴーレムとガルーダの魔石を貰っておいた。何か装備を作る際に使えるかも知れないしな。


「いつもありがとう。カースのお陰でいい経験ができたわ。お昼には遅いけど、食べに行きましょう。私の奢りね。」


「ご馳走になるよ。焼肉がいいな。」

「ピュイピュイ!」

コーちゃんも焼肉がいいらしい。かわいいやつめ。


こうして私達は昼から焼肉を堪能した。満腹になったので、少し早いけど自宅に戻って入浴、そして昼寝をする。


クタナツの実家と同じように、こちらにも庭にコーちゃん用の塒を用意してある。あれから汚銀のゴーレムには出会ってないので、普通に買ったのだ。そして湯船を作って庭に置いてある。


平和で長閑な時間を二人で過ごす。

そして夕方。


「坊ちゃん。夕食はどうしますか?」


「いつも通り三人分お願いね。」

私達は成長期だからな。すぐにお腹が減るのだ。マーリンの料理は素朴で心に染みるんだよな。コーちゃんもお気に入りだ。


そして再び入浴、また睡眠。

朝は少し早く起きてアレクは学校、私はクタナツへと戻り道場へと向かう。


ここ二年の私達のライフスタイルはこんな感じだ。楽しくもハードな生活だったりする。

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