第330話

スティード君に聞いてみると……

「クタナツ校で他に強い人はいるかって話になったからカース君を挙げたんだよね。そしたら『どうせアレクサンドリーネ様の七光りじゃないの?』なんて言うものだからついムキになっちゃったんだ。」


サンドラちゃんは……

「私の知識の源はカース君だって言ったら『こんな時までお世辞言わなくてもよくない? それにアレクサンドリーネ様に言うならともかく、そのお付きの男なんかに気を遣っても意味ないよ?』なんて言うのよ! 何も分かってないくせに!」


なるほど。私のために怒ってくれたのは嬉しいな。


「うーん、二人ともそう言ってくれるのは嬉しいけど、あんまり無茶振りされると困るよ。アレクも。」


そこにソルダーヌちゃんが割り込んでくる。


「あらあら余裕なのね。アレックスがメロメロになるだけあるのかしら。興味が湧いてきちゃったじゃない。」


「ならソルダーヌ様、僕がやります!」


ターブレ・ド・バラデュール君も口を挟んできた。


「どうかしらカース君? ターブレ君と勝負してみない? こちらで言い出したことだから勝ったら賞品を出すわよ。勝てたらね。」


「賞品次第かな。僕の服装を見てくれる? そんな僕が欲しがりそうな物があるならやってもいいよ。」


今日はサウザンドミヅチのウエストコート、トラウザーズ、ブーツを身に付けている。これを装備してたら勝負にならない気もする。


「何よそれ? どれだけお金を積んだらそんな服を作れるのよ。残念ながら賞品は出せないわね……あなたの力を見たかったわー。はぁーあ。」


そんな期待を込められた目で見られてもなぁ。


「じゃあ領都に小さい家を用意できる? 安くしてくれるだけでいいよ。それならやるよ。」


「いいわよ。あなたも卒業したら領都に来るの?」


「いや、アレクが行くから時々遊びに行く用。愛の巣かな?」


「そんなカース、ああ、愛の巣だなんて……」


おっと、またまたアレクが真っ赤になってる。


「じゃあやろうか。準備はいい?」


バラデュール君を見上げて尋ねる。


「いいぞ! どこからでっ」


いきなり虎徹で脛を打つ。

あっさり骨が砕け、バラデュール君は座り込んだ。


「まだやる?」


「くっ、開始の合図もしてないのに卑怯な!」


どの口が言うかな。

いいぞって言ったじゃないか。しかもわざわざ準備はいい? って聞いてあげたのに。


「じゃあまだやるんだね。」


虎徹を振り上げ頭を狙う。


「それまでよ! ターブレ君の負け。残念ながら卑怯とは言えないわね。家は用意するわ。値段はまた相談しましょ。」


「何よソル。諦めがいいのね。でもそれで正解よ。カースは容赦ないから降参しないと酷いことになるもの。」


そんな酷いことにはならないと思うぞ。


「あんまり高いのは無理だよ。金貨百〜二百枚ぐらいでお願いね。」


そこにサンドラちゃんが。


「女の子のために家まで用意するなんてますます大貴族オヤジになってきたわね。」


分かっている。金にモノを言わせてやるぜ。


「おっと、これを飲むといいよ。」


バラデュール君に高級ポーションをプレゼント。サービスだ。


「くっ、すまん。いただこう。」


「ターブレ君よかったわね。実戦じゃなくて。それにしても、よく普段からそんな高そうなポーション持ってるわね。」


「カースは凄いんだから!」


「でも春から心配ね。アレックスが領都に行ったら色んな男から狙われるわよ? そんなに何回も来れないでしょ?」


「そうだね。アレクはこの上なく可愛いからね。まあその辺は何とかなるよ。」


「違うわよ。そっちじゃなくてアレクサンドル家なんだからバカな男がたくさん寄って来るって意味よ。分かってるの?」


「ソル、クタナツの人間にそんなこと言っても通じないわよ。それに両親だってカースに一目置いてるの。変な見合い話を持ってくることもないわ。それよりあなたはどうなのよ? 気になる男の子はいないの?」


おっ、風向きが変わってきた。バラデュール君がピクッと反応したぞ?

これはどうなるどうなる?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る