第325話

クタナツに戻った私は城門で門番の騎士に全てを伝えた。残りを皆殺しにして証拠を消してもよかったのだが、アレクの前だしな。


それにしても、またヤコビニ派か。

普通に考えてサヌミチアニからクタナツに救援を求めるっておかしいだろ。まずは領都に行けよ。何でこんな最果てに来るんだよ。代官ならすぐ気付くだろう。私が気にすることでもない。


「やれやれだったね。お茶飲んで帰ろうよ。疲れたね。」


「あれだけの人数を相手に圧勝だなんて、カッコよかったわよ。だから私の奢りね。」


「ふふっありがとう。」


目の前で大量殺人をした男に対してカッコいいと。これがクタナツ女性の価値観だ。弱い者は見向きもされない。







夜、自宅にて。城門で騎士に伝えたことを母上にも伝える。今夜は父上もオディ兄もいない。


「すっごい怪しいよね。ダブロットは何も知らないみたいだったけど、サヌミチアニはどうなってんだろうね。」


「分からないわね。普通に考えたらサヌミチアニにクタナツ騎士団を呼び込みたいのかしらね。」


「えー? それって誘き寄せて何かするのかな。それともクタナツを手薄にしたいとか?」


「そうなのかもね。草原の街の建設も遅れるでしょうしね。」


なるほど、新しい街も目障りなのか。代官も大変だな。




後日父上から聞いたのだが、ダブロット一家は奴隷落ちしたらしい。唯一子供だけは領都の孤児院に入ることになったとか。

表向きの理由はクタナツ貴族に対する殺人。実際は潜在的ヤコビニ派だかららしい。しかも代官はサヌミチアニに援軍を出す気らしい。冬前の時期に一体なぜ? あの代官のことだからヤコビニ派憎しで行動をしてるとは思えないが……

殺されかけた私が言うのもおかしいが、援軍を求めに来たら奴隷になった……可哀想かな。まあヤコビニ派の動向次第では恩赦もあるらしいし、死ぬよりいいよね。だいたいなんで家族連れで来てんだよ。亡命か? 意味が分からんな。




さて、冬前と言えば秋の大会。今年はクタナツ開催なのだ。他の街の代表がやって来て大規模ではないが、それなりのお祭り騒ぎが始まろうとしている。

新しい街の建設で賑わっていることに加えてクタナツにしては珍しい活気となっている。


そこで、我がクタナツ校の代表は……

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