第303話

ノワールフォレストの森から帰った翌日、パイロの日。私はアレクと連れ立ってギルドに来ていた。マリーのアドバイスに従いラセツドリを売るためだ。


「お疲れ様でーす。」

「お疲れ様です。」


そろそろ私達も新人を卒業だろうか。私達より年下もいるにはいるらしいが。


受付にて。


「買取をお願いします。ラセツドリです。」


「ではこちらに。ほぉーやりますね。では査定いたします。待たれますか? 一時間もかからないと思いますよ。」




「じゃあアレク、そこで何か飲んで待ってようか。」


「そうね。何があるかしら。」


子供向けのメニューなどないかと思えば、ミルクセーキがあるではないか。意外だ。

二人ともミルクセーキを飲んでご満悦だ。


酒場あるあるとしては、ミルクセーキやホットミルクなどを頼むと他の客に馬鹿にされて喧嘩になるというイベントがある。今回は何も起こらなかった。帰ってママのおっぱいでも吸ってなって言われるアレだ。


査定が終わったようだ。


「金貨九十三枚です。胴体の傷がなければ二百枚近かったと思いますよ。次から気をつけてくださいね。」


すごいな。トビクラーやコカトリスとは段違いだ。それだけ厄介かつ貴重なんだろう。

受付横の本で調べてみると……爪、嘴、羽は全てアクセサリーとなり、血や肉は毒薬の原料となる。対魔物用の奥の手だったりする。




さあ次はお待ちかね。クランプランドだ。

アレクと手を繋いで街を歩く。到着。

おっ、ファトナトゥールの隣の隣だ。


「こんにちはー。」

「こんにちは。」


「……おう。」


「マギトレントで風呂、作れる?」


「……おう。」


二日酔いかな? そうは見えないが、元気ないな。


「木材はどれぐらいあればいい? 二つ作って欲しいんだが。」


「……サイズは?」


「一つはこれ、もう一つは木材次第かな。取り敢えず木材を出したいけど、どこに置いたらいい?」


そう言って私は紙を渡す。自宅の風呂のサイズを書いておいたのだ。


「……こっちに。」


まずは一本分。


「これがもう五本ある。足りそう?」


「……十分だ。この紙のやつは一本で足りる。……もう一つはかなり大きく作っても足りるだろう。」


「そいつはありがたい。では贅沢に五メイル四方で深さは一メイル、そしてこれの上に作ってもらえるかな。」


私は銀ボードを取り出した。これを底に敷いておかないと、金操で浮かせられないからな。浮身だけだと出だしが不安なんだよね。

その場で銀ボードを五メイル四方に延ばしておく。


「……分かった。急ぎか?」


「いや、お任せで。いくらかかる?」


「……二つ合わせて一ヶ月半で金貨六十枚ってとこだ。」


「決まり。俺は三番街のカース・ド・マーティン。小さい方を先に作って欲しい。設置はこちらでやる。」


「……モコスア・ボンドゥだ。小さい方だけなら今月中には出来るだろう。」


「分かった。なら金はその時に全額払おう。で、木材は何本置いていけばいい?」


「……四本、だが残りの二本も置いていくならタダにできる。」


「そいつはありがたい。では全部出しておこう。頼んだ。では月末にまた来る。」


「……毎度。」


職人って色んなタイプがいるもんだな。それにしてもラッキーだったな。現物で支払いが済んでしまった。ミスリルで金を使ってしまったから財産が半減してたんだよな。



「あの大きなお風呂が完成したら空中風呂に招待するよ。きっと最高だよ。」


「え、ええ、い、一緒に入ってあげてもいいんだから!」


おおー、久々のツンデレ? なのか?


「お風呂用の服を用意するから大丈夫だよ。一緒に入ろうね。」


適当に麻とかで湯浴み着を発注しておこう。


「う、うん。楽しみにしてるんだから!」


私も楽しみだ。十月末ぐらいかな。

今月末と言えばアッカーマン先生!

まだかなまだかなー。

アッカーの先生まだかなー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る