第202話
さて、汚銀だが困ったことが起こった。
満タンにするまで四日ほどかかったのだが、それはよい。
問題は……
魔力庫に収納できないのだ……
私の魔力四人分が込められているからなのか……
そりゃ魔力ポーション要らずとはいかないわな。そうなると銀ボードにはあまり魔力を込め過ぎないようにしておこう。
となると銀湯船の方はしばらく庭に置きっぱなしだな。それでも空中露天風呂に使う分には問題ないはずだ。
明日で春休みも終わり、明後日からまた学校か。充実した休みだったな。
明日はみんなで遊ぶ予定だが、何をしよう。
そして春休み最後の日、私達は南の城門付近に集合していた。セルジュ君の発案で城門外で狼ごっこをすることになった。少し危険はあるが広く悠々と遊ぶのが今日のコンセプトだ。
全員にタッチするのではなく、最初にタッチされた者が狼役を交代する鬼ごっこと同じルールである。
クタナツの城門外、南西部なのでゴブリンやコボルトが現れることもなく、城門を出入りする冒険者や商人もこちらを気にすることもなかった。
時々冒険者が近くを通ることもあったが
「子供だけで大丈夫か?」
「俺らは仕事してんのにいい気なもんだぜ」
「楽しそうだなぁ」
などと言いたそうな顔をしていた気がする。
そろそろお昼だ。
弁当はいつも通り持ち寄っている。
セルジュ君は机と椅子を用意してくれていた。
さすが気が効く!
私も負けじと『闇雲』を使い日差しを防ぐ。
春なのでそこまで暑くはないのだが、眩しかったりするからだ。
お腹いっぱいな上にポカポカ陽気。
眠くなってきた。みんなも眠そうだ。
「お昼寝しようよ。ここならゴブリンも来ないだろうし。」
「そうね。はしたないけど今日ぐらいいいわよね。」
サンドラちゃんも眠そうだもんな。
一応『自動防御』を広めに張っておく。
外で雑魚寝なんて平民ですらやらない暴挙だが、これもある種の贅沢に違いない。
みんなコロンと寝てしまった。貴族らしくないなぁ。
最初に目が覚めたのは私か……
一時間ほど眠るつもりが、おそらく三時は過ぎている。寝すぎたな。春の陽気は恐ろしい。
みんなを起こすのも悪い気がしたのでこのまま待ちだ。
次に起きたのはサンドラちゃんか。
「思いの外よく寝たわね。カース君はいつ起きたの?」
「ほんの五分前かな。よく寝てしまったよね。国語の授業でやった『春暁』みたいなもんだよね。昼だけど。」
「うふふ、そうね。南側だけど子供だけで、しかも魔境で眠りこけるなんてね。」
案外ゴブリンぐらい来たのかも知れないが、寝てても自動で防御してくれるのはありがたい。
私とサンドラちゃんの話し声でみんな起きたようだ。
ちなみにアレクは私の腹を枕にしていた。油断ならない。
こうなってはみんな今から動く気にもなれなかったようで、いつも通りタエ・アンティへお茶をしに行くことになった。
寝起きで喉が渇いていたことも関係しているだろう。
今日で春休みも終わりか、私達もついに五年生か。五人で遊べるのも後一年、どんな一年になるのだろうか……
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