第171話

今夜の夕食は父上とオディ兄がいない。

さらに兄上と姉上はどこかに遊びに行っている。

よって母上とキアラの三人だ。マリーも一緒に食べればいいのに。

母上に状況を話してみた。特にアレクのことを。


「何と言ったらいいのかしら…… アルベルティーヌ様も思い切ったものね。カースの凄さに気付いてしまったのかしら。カースはどうしたい? アレックスちゃんと婚約する?」


「うーん、それは早い気がする。確かに好きになっちゃったけど、まだ結婚とか婚約とかは考えたくないかな。そもそも騎士長には反対されてるしね。」


「そうね。好きにするのが一番よ。そうなると卒業後の進路も迷いどころね。体を鍛えたいのならフェルナンド様のように無尽流に弟子入りするって方法もあるわよ。」


「あーそれいいな。先生みたいに強くなれたら最高だよね。それこそ早くから始めた方が絶対強くなれそうだし。でも王都には行きたくないしなー。迷うね。」


「そんなカースに朗報よ。フェルナンド様の先生、コペン・アッカーマン様がクタナツにいらっしゃるわよ。」


なんと!!

それはビッグニュース!


「それは旅行とか?」


「いいえ、王都の道場を弟子に譲ってこのクタナツで引退がてら小さい道場を開くそうよ。およそ半年後ね。」


「すごい! じゃあ弟子入りしてもいいの!? やっぱ試験とかあるの!?」


興奮してきた。

剣術で身を立てるつもりなどないのに、先生の先生が道場を開くのならぜひ習いたい!

でもやっぱり厳しいんだろうなぁ。


「大勢が押しかけたら試験になるでしょうね。先生もほとんど引退だから大勢の弟子を取ることはないと思うわ。」


「決めた! アッカーマン先生の道場に入る! よーし燃えてきた! 明日から試験に通るよう頑張るよ!」


「うふふ、頑張りなさい。きっとアランも喜ぶわ。」


いやーまさか私がこんな進路を選ぶとは。

仕方ないよね、フェルナンド先生がカッコよすぎるんだから。そりゃあ成れるもんならああ成りたいって思うよな。

明日からスティード君にも相談して稽古をつけてもらおう。


「ちなみに道場を開くのが半年後ってことは先生が来られるのはいつぐらい? やっぱり馬車で来られるんだよね?」


「それは分からないわ。到着が半年後かも知れないし。奥様もご一緒だから馬車だと思うわよ。」


「そっかー、楽しみだなぁ! どんな人なんだろう。母上はお会いしたことあるの?」


「少しだけね。まだアランと結婚する前だったかしら。道場で見学してたの。すごかったわよ。当時のアランやフェルナンド様が手も足も出なかったもの。」


「すごい! ますます入門したくなったよ! 明日から頑張るよ!」


これからは金操に頼らず体を鍛えよう!

特に足腰だな。またみんなで狼ごっこをするのもいい!

燃えてきた! 私の青春はこれからだ!

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