第145話

その夜、夕食時に全て話してみた。

隠すことが辛くなったわけではないが、進路的にそろそろ伝えておいた方が無難だと思ったからだ。

具体的には

・将来金貸しをやること

・個人魔法を持っており、騎士長にも効いたこと

・冒険者登録をしたこと


両親は絶句していた。

一日でたくさんのイベントがあったせいだろう。


「お前、あの騎士長と一緒に風呂入ったのか……しかもその場で契約魔法とか……いや個人魔法か……」


「金貸しって大変なのよ? クタナツ内でやるなら安全だとは思うけど……」


「うん、まずはクタナツで細々とやるよ。そのうち領都に進出したりするかも。

そこで母上には守りの魔法を教えて欲しいんだよね。解毒とか解呪とかも。」


「それはいいけど……いつから考えていたの?」


「うーん、小さい頃からかな。なるべく働かずに暮らしていきたいんだよね。」


すると父上が笑い出した。


「はっはっは、こいつは面白い。私そっくりじゃないか。これじゃあ文句も言えんな。死なないようにやれよ。」


「うん、ありがとう!ぼくも親孝行するから!」


これで家族への根回しはバッチリだ。

困った時は助けてもらおう。







そして夜、いつものようにアランとイザベル、マリーは酒とともにテーブルを囲む。


「ふう、カースには驚かされてばかりだな。」


「そうね。個人魔法にも驚いたけど、金貸しをやろうとするなんて。」


「思い起こせばカース坊ちゃんは個人魔法の話を興味深そうに聞いておりました。私の話を参考にどの程度ご自分の魔法を公開するか判断されたのでは?」


「そうなんだろうな。個人魔法は評判がよくないからな。」


「本当に大丈夫かしら? もし王都でそんなことしようものならすぐ殺されてしまうわ。」


「うむ、そのために守りを固めようとしているのだろう。もっとも解毒や解呪の魔法はカースには無意味だろうがな。」


「それもそうね。そうなると直接危害を加えられることだけ気をつけておけばいいわね。本当に変な子ばっかり。」


「私もいくつか便利な魔法に心当たりがありますので、お教えしたいと思います。」


カースが家族に相談をしたことは正解だったらしい。

魔力はまだまだ上がる、これから使える魔法の数が増えれば鬼に金棒だろう。

闇金やみがねカース』、『呪いのカース』として恐れられる男はこうして誕生するのだった。

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