第140話 父の心境

うちのかわいいアレックスが男を連れてくるらしい。だからその日は夕食までに帰ってきて欲しいと。

グリードグラス草原の開拓が始まったばかりでロクに帰れない日々が続いているが、それならば無理をしてでも帰らなければ。

好色騎士マーティンの三男か……

どんな男か、少し楽しみだ。


そしてようやく仕事を終わらせ家路につく。同じ代官府の敷地内だから近いものだ。

夕食はすでに終わっており、奴は風呂に入っているとか。

ちょうどいい、見極めてくれる。


私は風呂のドアを開け中に入る。

ちょうど出るところだったか、しかし構うことはない。

ここは軽くプレッシャーでもかけてやろうかと思案していると、

「お先に失礼します。いいお湯でした」

だと?

なんだその落ち着きようは。

私を知らないわけでもあるまい。

まるで近所のおじさんではないか。


たわい無い話をしつつアレックスのことを聞いてみる。


困るだと!? 欲がないのか? ただのバカなのか?

しかも金貸しをするだと?

やすやすと契約魔法をかけてきたことには驚いたが、そこまでして口止めするほどの秘密ではなかろうに。

分からん小僧だ。

その上『おじ様』と来たか。


しかし『クタナツを更地にしてでも』とはな。あの魔女の息子だけあるか。

生き馬の目を抜く商人や荒くれ冒険者を相手にどのように金貸しをするのか興味深いが、長生きはできまい。可哀想だがアレックスはやれんな。


この契約魔法も魔法部隊の者に解呪させようと思ったが、するまでもないだろう。

あの子が死ねば自然と解けるからな。

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