第105話 キアラと、オディロンと
その日の夕食にて。
「カースはキアラとプールで遊んでたんだって? 涼しそうでいいじゃないか。」
「遊びでもあるんだけど、もしもの時に備えてキアラに泳ぎを教えておこうと思ってね。服を着たままでも泳げるようになって欲しいんだよね。」
「いい心がけだな。騎士は鎧を着たまま泳いだりするが、それと似たようなものか。キアラどうだー? 水遊びは面白いかー?」
「うんちちうえー。おもしろいよー。カーにいの魔法もすごーい。わたしも魔法つかいたいー。ははうえおしえてー。」
「あらあらキアラちゃんったら。魔法を使いたいのね。魔法は大変だけど頑張れるの?」
「うん! がんばるー!」
二歳の時の私と同じようなやり取りをしている。うっかり頑張ると言ってしまったために地獄の経絡魔体循環を受けることになったんだよな。
あの時の私より年上だけど、キアラに耐えられるものなのだろうか。
心配だ……
まあ私は気にせず泳ぎを教えよう。
その夜、私は贅沢にもプールを丸ごとお湯にして広々と露天風呂を満喫していた。
「ふう、星がきれいだ。」
雰囲気に浸りたく呟いてみた。
すると、そこにオディ兄が帰ってきた。
「オディ兄おかえり。妙な時間に帰ってくるんだね。」
「ただいま。カースこそ相変わらず妙なことをしてるよね。少しギルドで揉めたんだ。夕食に間に合う予定だったのに。」
「それは災難だったね。じゃあ思い切ってここでお風呂に入っていきなよ。これだけ大きいお風呂は王族並みかも知れないよ?」
「何が『じゃあ』なのか分からないけど、入ってみようかな。確かに大きいよね。」
よし、やっとオディ兄もこっち側に来るか?
少しハードルを下げてあげよう。
「露天風呂では服や布、下着を一切つけないのがマナーらしいんだけど、オディ兄の場合既に全身きれいにしてるよね? だからパンツぐらい穿いててもいいと思うよ。」
「そうなのかー。じゃあパンツだけ穿いておこうかな。」
そう言って服を脱ぎ、入ってくる。
星明かりしかないので、オディ兄の裸体など見えない。安心だ。
「ふぅー、いい気持ちだね。確かに家の中のお風呂とは違うかもね。星がきれいだ。」
おお、分かっているじゃないか。
露天風呂最高だよね。
よーし、いつか空中風呂をできるようになったらオディ兄にも味わわせてあげよう。
「ところで、ギルドで何があったの?」
「あぁ、ベレンちゃんにちょっかい出す奴がいてね。ベレンちゃんもムキになっちゃって危うく決闘騒ぎになるとこだったんだ。
僕らのパーティーってね、先輩達には可愛がってもらってるけど、同期には結構嫌われてるんだよね。」
「嫌われてるの? 意外だね。そりゃまたどうして?」
「ギルドの伝統でね、登録したばかりの新人はギルドの入口で通り過ぎる先輩達に挨拶をすることになってるんだよ。もちろんやるかやらないかは自由だけど。
僕達はそれをきちんとやったんだよね、すると先輩達がやたら優しいんだよ。
それを他の同期達はやらなかったみたいでね。」
ははあ、自分達だけ上手く取り入りやがって! ってとこか。
「そんな同期がベレンガリアさんに絡んできたってところ?」
「そうなんだよ。ダキテーヌ家がクタナツから出ていったじゃない? だから何の心配もなく絡んできたんだと思うんだ。」
「うわー、小物なんだね。そう言えば母上が昔、小物は相手にしてはいけない、口先で丸めろって言ってたね。」
「そうなんだよ。僕が何とかしたんだよ。面倒だったよ。ベレンちゃんはリーダーとしては頼り甲斐があるのにさー、こんな時すぐムキになるから大変だよ。」
「へぇー大変なんだね。ところで、星空の下で語り合うのも悪くないでしょ?」
「ふふ、そうだね。少しカースを見直したよ。これは出荷前の奴隷にしては贅沢すぎるよね。」
ふふふ、オディ兄は完全にこっち側だ。
次は誰を餌食にしてくれようか。
ちなみに風呂から上がったらオディ兄に乾かしてもらった。バスタオル要らずだ。
実戦経験を経て一段と腕が上がったように思う。私も負けていられない。
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