第74話 カース、飛べない?
『
鉄塊で作った純度高めの鉄でやってみる。
うん、まあまあスムーズだ。
一キロムの鉄なら楽勝で動かせる。
この分だと制御に問題はなさそうだが、有り余ると思っていた魔力量に問題が出そうな気がする。
何せかなりの無駄使いをするようなものだ。
空を飛んでいて魔力が切れたら死んでしまう。
はっ! だからみんな空を飛ばないのか!
歩けばいいものをわざわざ飛ぶ必要などないってことだな。
そりゃそうだ。
てことは幼き頃、空を飛びたいなんて言った私はやはり変だったのか。
まあいい、頑張ろう。
学校から帰っては庭で鉄を浮かせる日々。
段々と重さと速度は増し、エレベーターのように上に行ったり下に行ったりを繰り返す。
勢い余って何かに当たったら大変なので、上下にしか動かしてないのだ。
ちなみに今でも魔力放出はきちんと行っている、毎日休まずではないが。
庭の木に魔力を流しているのだ。
でもやはり木に変化はない。
捨てるよりマシだからいいけどね。
そして季節は夏。
カースは露天風呂をそのまま水風呂にして、浸かりながら
この日カースはある思い付きを実行に移そうとしていた。それは……
風呂ごと、湯船ごと浮くことである。
暑い日に外で水風呂、客観的には奴隷の芋洗だが、カースにとっては贅沢な楽しみなのだ。
そこでさらに贅沢をしてみたくなったのだろう。
全く度し難い。
「かなり重いからなー、せめて外側の土だけでもどけておこう。
鉄の湯船に満タンの水、一トンを軽く超えてるな。でもこれができたら空なんて楽勝で飛べそうだ。」
『
だめだ、びくともしない。いや、ガタガタとはするが浮き上がらない。流石に無理があったか。
風操で補助をしようにも浮いてないので、下から風を吹き込むこともできない。
よし、諦めた。
普通に練習を続けよう。
ちなみに三十キロムの鉄なら上空五百メイルぐらいまで上げることができている。
上下の往復に約五分、中々いいペースである。
こうやって普通にやっていればよいものを、もしも先程の実験が中途半端に成功していれば、そこそこの高さから湯船ごと落下していたことだろう。
数トンの金属の塊の落下を止められるものなどいないだろう。事故が起きなくてカースは幸運だったのだ。
ちなみにその日の夕方、風呂は再びプールに作り変えられていた。
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