第64話 カース、ギラギラの三年生

うちなびく春、カースは三年生になった。

オディロンとその仲間は十等星として華々しくはないデビューを飾った。

キアラはもうすぐ二歳。

家中を歩き回るやんちゃな女の子だ。




新学期、私は再び一組、たぶんいつものみんなもだろう。


「カース、また私と同じ一組になれて嬉しいでしょう! お弁当を一口食べていいんだから!」


「アレックスちゃんおはよう。お弁当楽しみだよ。もちろん嬉しいに決まってるよ。アレックスちゃんは?」


「いやっ、そのっ、うれっ嬉しくなんてないこともないんだからっ!」


自分に同じ質問が来ることは想定してないのか。かわいいやつめ。





担任はやはりウネフォレト先生だ。


「みなさんが元気に三年生になれて嬉しいですよ。今日からまた張り切ってお勉強しましょうね。

一時間目は国語ですよ。」


三年生最初の国語は文章読解だ。

短い詩を例に情景や作者の考えを読み取る授業である。


二時間目、算数。


「今日からかけ算というものをやりますよ。

これができるようになっておくとかなり便利ですから、頑張りましょうね。」


歌に乗せて覚える授業だった。

軽快なメロディーだ。覚えやすいだろう。


三時間目、魔法。

やはり三年最初の授業なので、ナウム先生は標準魔力検査球を用意している。


「さあみなさん、今回の検査は百まで測れますからね、張り切っていきましょう。」


やはり貴族組は全員百、すっかり数が少なくなった平民組は三十から八十ぐらい。

こうやってじわじわと差が開いていくのか、才能の差もあるのだろうが、環境・努力の差も大きいのだろう。


最近お腹がやたら減るようになってきた。

お昼が待ち遠しい。


二年の終わりぐらいから昼食のメンバーに少し変化が出てきた。

変わりがないのは、

パスカル君・エルネスト君の上級貴族コンビに黒髪下級貴族のイボンヌちゃんを加えた三人組。


そして私達五人組。


変わりがあるのが……

平民組が五人になった。一人減ったのだ、その上……

金髪縦ロールのフランソワーズちゃんを中心とする四人組に下級貴族六人組が加入して十人組となり、さらにその下に平民五人組が下働きのように付き従っている。

これは俗に言う『姫』状態なのか。


総勢十五人の大派閥となったわけだが、このグループ内の他の女の子、平民ニ人に下級貴族一人の居心地はどうなんだろう。

これも貴族との付き合いを勉強する良い機会と考えるべきなのか。

普通に考えれば平民が下級貴族はおろか、上級貴族と接点があることなどそうそうないのだから。


一年の頃は全員で狼ごっこやゴブ抜きをするほど仲の良い組だったのに。

二年の後半ぐらいからそんなこともなくなった。これもある種の成長なのかもな。淋しいことだ。


そんな状態ではあるが私達五人組には関係なく、弁当がうまい!

スティード君の弁当は肉が多く、サンドラちゃんの弁当は野菜が多い。

セルジュ君の弁当には果物が多く、私の弁当には穀物が多くなっている。

いつのまにかみんなでバランスを取るような弁当になったのだ。

アレックスちゃんの弁当は高級食材が多く、量も多いので私達はみんな贅沢かつバランスのよい食事をとることができている。


ちなみにみんなの弁当は朝すぐに魔管庫に入れて昼に取り出すことになっている。

魔力による冷蔵庫みたいなものらしい。


今のところ、弁当がなくなったとか中身が食われていたとか事件はない。

もちろん腐っていたこともない。

平和でいいことだ。


この平和が、ずっと続けばいいのだが。

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