第30話 カース、三歳最後の秋
虫や鼠を相手に魔力放出をやってみたが、特に何もなかった。
風が吹く程度の影響すら感じないらしい。
直接触って流さないとだめかな?
木の成長ぶりや地面にも変化・変色等は見られない。
どうせ捨てるようなものだから継続してもいいのだが、どうしたものか。
放出された魔力は煙のようなものだが、煙と違うのは上に登らないことだ。
コーヒーにミルクを入れた時のようにじわじわと周囲に解けて見えなくなるかのようだ。
まあ目には見えないので何となくそう感じるだけだが。
参考文献はないかと探してみたら、体内の魔力に関してはいくつかあったが、放出された魔力に関しては何もなかった。
母上に聞いても
「魔力は魔法を使って形を与えてあげないと何にもならないわ。カースちゃんにはまだ早いから、次の誕生日まで魔力放出をがんばろうね。」
母上ですら知らないということは、誰も知らないと考えていいだろう。
もし罷り間違って私が何かを発見すれば第一人者となれるな。
少し燃えてきた。
ふふふ、人が知らないことを知っていることは私の優越感を刺激してくれる。
ファンタジーでよくあるのは、魔力を武器に流して切れ味を上げたり、切りながら燃やしたりすることだ。
そこで包丁に魔力を流してみたが、だめだった。
袋や箱に魔力を集めようとした時のように、包丁がそこにないかのように魔力が散っていった。
ただ手から魔力放出をしているだけの状態と変化がないということだ。
これは包丁だからだめなのか金属全般がそうなのか、謎は増える一方だ。
大抵の場合魔力と親和性が高い金属がありそうなものだ、オリハルコンとかミスリルとか。
やがて季節は秋、誕生日まで後三週間となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます