無添加の世界④

「あっちは合流したみたいだねー。出来れば僕も行きたいんだけど、お兄さんそろそろしちゃいなってギブギブ」


「……断る」


「でもさー、メリッサには誰も勝てないよー? だから大人しくしてくれた方が僕も助かるなー」


圧壊クラァシィン


少年の両足が地面から離れたところを狙った一撃も、大きなクレーターを作っただけで仕留めるには至らない。

それどころか鋭く切り返した一撃が腕を掠める。


「すごいすごい、これが人類で最強の戦闘民族の力。象のお腹も蹴りで貫いて、馬を無休で走らせても3日の森を1日半で駆け抜ちゃう足」


両手に持ったダガーナイフをくるくると回しながら感嘆しつつも、その双眸そうぼうはしっかりと目の前の獲物を物色している。

油断を誘うような口調とは裏腹に、ほんの少しだけ動いた左手に合わせて足下がせり上がり、広範囲に渡って爆発が生じる。

上手く誘導に成功した少年は予め仕掛けていた罠を作動させ、空に逃げた獲物を先程の爆破と同じ規模で一気に叩き落とす。


「凄いね、このコンビネーションで仕留められなかった傭兵は初めてだよ」


煙の中からほぼ無傷で姿を表した無愛想な男を見て、少年は感激の声を漏らす。


「ふんっ、くだらん」


「お兄さん名前は?」


「ユーリ・イルカルラ」


「ユーリ……僕はギルバート・ウィンチェスター。また会おうね、お兄さん」


そう言って闇夜に紛れたギルバートの気配を見失い、踵を返して大きく離されたフランチェスカの方に急ぐ。

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