第2話:宣戦布告
第2話:アバンタイトル
月面に中国と米国・EUの基地が建設され、何とか宇宙資源とエネルギーを得ようとしていたが、それも遅々として進まなかった。
人類は、ある意味停滞していたのだが、太陽系を謎の粒子雲が通り過ぎたのはそんな人類の状態を払拭しようとした神の采配だったかもしれなかった。
その謎の粒子雲が太陽系を通り過ぎるのにかかった時間は一週間だった。宇宙は蒼く光り、地球粒子雲に包まれたとたん、全ての電子機器がその機能を停止してしまった。
全ての電子機器が止まる。産業も経済も流通も大混乱に陥り、世界各地で多くの人命が失われたのだった。
人々は蒼く光る夜空を見上げ、世界の理不尽さを嘆くしかなかった。
一週間後、謎の粒子雲が太陽系を過ぎ去り、再び電子機器が使えるようになった。しかし災害の爪痕は大きく、その復旧には多大な時間がかかると予想された。
それでも人々は復興に向けて動き出し、世界の混乱は治まるかに見えたのだが、それも天文学者が太陽系内の驚くべき異変を報告するまでだった。
謎の粒子雲が太陽系を通過することを天文学者は予想だにしていなかった。もし予想できていればこれほどの大惨事は起こらなかったことは明白で、各国は再び同様な現象が起きないか、天文学者が総動員で宇宙へ監視の目を向けたのも当然であった。
すぐさま宇宙の監視の目を向けた各国は、そこで太陽系のに驚愕すべき異変が起こっていることに気づくのだった。
その異変とは、木星に巨大な
最初太陽系内の異変について報告を受けた各国首脳は「そんな馬鹿げたことがあるか」と一蹴したが、それも天文学者と奇跡的に生き残っていた月面基地からの観測情報が集まってくると、その事実を受け入れるしかなかった。
人類が住める惑星が、手の届く範囲に出現したことは、地球を食い潰そうとしていた人類にとって、千載一遇のチャンスであった。各国は手を取り合って宇宙開発に乗り出すべきだった。
しかし、そんな夢物語は実現するはずもなく、結局金星と火星の植民と開発という
独自で開発を行えそうな米国やロシア、EU、中国はそれぞれが勝手に開発宣言を行い、それ以外の国々は、奇跡的に存続してた国連による開発を主張した。
各勢力が個別に宇宙開発を実施する中、自国の開発より相手の開発を遅らせることに力を注いだ国…何処とは言えないが…宇宙空間での
第三次世界大戦の始まりは、やはり大国間での核ミサイルの応酬だった。核ミサイルが本来の威力を発揮していれば、人類はそこで週末を迎えていたが、なぜかそうはならなかった。なぜか、それは核ミサイルの威力や放射能の影響が、お話にならないレベルに落ちていたからだった。
後の科学者の調査により、地上に残留していた謎の粒子が、核ミサイルの核分裂や核融合の核反応を抑止し、放射性物質の浄化現象を行ったのではないかと結論づけたが、その頃には地上には謎の粒子は残っておらず真実は不明のままだった。
一部の宗教家は、神が核戦争による人類の滅亡を食い止めるために謎粒子を送り込んだと主張したが、その主張を信じる人は少なかった。
核戦争による人類の滅亡は免れたが、核が使えないからと言って戦争が終わるわけもなく、通常兵器やBC兵器は使用できたので、戦闘はより直接的かつ悲惨な物となった。
そして、戦争による人的資源の枯渇から大国は、AIを搭載したロボット兵器の開発と戦争への投入に踏み切ったのは、当然の成り行きであった。
司令部からの命令で独自に判断して戦闘する無人航空兵器や機甲部隊といったロボット兵器の投入で、実際に戦死する兵士は減ったが、それで戦争が終わることはなかった。結局、世界の人口が半分に減った所で、ようやく戦争は終結し、人類は統一国家…地球連邦政府を樹立することができたのだった。
それから50年、連邦政府は火星と金星の開発を積極的に進めた。それは、地球が他の惑星から資源を得なければならないほど疲弊していたからである。
そして火星と金星への移民開始から100年、両惑星の開発は順調に進み、食料や地下資源などが地球に送られるようになると、地球はようやく昔の反映の歴史を取り戻そうとしていた。
そんな地球の繁栄にくらべ、火星と金星に移民した人々は、地球復興のために多額の税金を課せられ、食料や資源も搾取され苦しい生活を余儀なくされていた。
もちろん移民した人達もそんな状況を黙って受け入れる訳もなく、独自の政府を地球からの独立を望む声が上がるようになり、今度は地球と火星、金星と言った惑星間の緊張が高まっていた。
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