ある事を期待した

ある事を期待した 第1話


 1月1日。


 目を覚ますと、何やらガチャガチャと物音がする。それも、どうやらキッチンからのようだ。


 自室のドアを開けた途端、鼻へと届いた匂いに、はあ? と首を傾げる。


「……煮物?」


 元旦の朝から?


 何やってんだよ、あいつ。


 ボリボリと頭を掻きながら、キッチンへと向かった。


 案の定、鼻歌混じりでキッチンへと立つ俺の同居人、中野浩行の前には湯気を湧き上がらせる鍋がある。


「何やってんの? お前」


 眉間に皺が寄るのは仕方のない事だと思う。ダルいにも程があるから、冷蔵庫に凭れ、瞼を半分閉じた状態で訊く。


「お? 起きたな。……味見してみる?」


 笑顔で振り向き、浩行はお重に山盛入った黒豆を菜箸で抓み、俺へと差し出した。


「……黒豆嫌い」


「うっそ! マジで? わがままだなぁー。修は」


 そう言って、自分の口へと入れる。


「美味い」


 自画自賛だ。


「……初めて作ったにしては」


 そーなのかよ。


「なんで元旦の朝から黒豆煮てんの? お前」


「ブッブー、昨日の晩からですぅー」


「徹夜ぁ?」


「そう」

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