第4話 キツネが寝ている間に

 キツネが眠り込んでからしばらくして、一匹のネズミが彼の前を通りかかった。自分よりも大きなさつまいもを抱えているため、よたよたと足もとがおぼつかない。今にも何かにぶつかってしまいそうなほどだ。


 さつまいもを抱えているのが疲れたのか、ネズミはそれを地面に置いて肩で息をする。


 呼吸を整えて食料を持ち上げようとしたネズミは、すぐそばにキツネの顔があることに気がついた。ギョッとして持っていたそれを落としそうになる。しかし、すんでのところで持ちこたえた。


 ネズミは、おそるおそるキツネの様子をうかがう。そんなネズミに気づくことなく、キツネはぐっすりと眠っている。


 ネズミは安堵のため息をついた。もう一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせたところで、キツネの首もとにあるハンカチに目が留まる。


(なんか便利そうなものがある!)


 何度も人家に出入りしているため、それの使い方は一応知っていた。


 ネズミはさつまいもを再度地面に置くと、キツネの首もとへと近づいた。彼を起こさないように慎重に結び目をほどくと、


「ちょっとお借りしま~す」


 と、小声で告げてキツネから離れる。


 さつまいもをそれでくるんで背負うと、ネズミはしっかりした足取りでその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る