第22話「4月1日」
正義は成されよ、たとえ世界が滅ぶとも。
この言葉自体正しかろうと間違いだろうと構わない。今この現状を慰めるものには
なりはしないのだから。
「リーダー。マサアキが連れていかれた」
反政府軍副リーダーのコウドが悔しそうに報告してきた。慰めようとしてくれているのか、下水道の奥の方から鼠たちがこちらをじっと見つめてきている。自分たちの
住処を追いやった人間たちのことを心配なぞしてくれているのだろうか。
「ああ、仕方がない。マサアキのことは忘れよう。他に損害報告は」
俺の冷酷ともいえる言葉に皆、ぴくっと反応はしたが特に声を挙げる者は
いなかった。全員理解しているのだ。我々の生存圏はもはや地上にはなく、この
薄暗くじめじめとし汚臭と糞尿にまみれた下水に追いやられて自分たちの身を。
2020年、日本は米国に経済法理軍力全てを握られ統治されている。名目上は
オリンピック開催中の治安維持。2001年に起こった貿易センタービルの反省し、
対テロ対策が出来ていない日本の保護を行う、と申し出てきた。日本政府は愚かにもその申し出を受け入れてしまったため、結果的として現状がある。
この方針に従わない人間、我々のような人間を米軍日軍両者合同で捕縛を行って
いる。
「我々は従わない。決して。たとえ我々の正義が間違っていようと。正義を行うことで多くの人間が滅ぶとも」
米国は自らの正義を成す為、日本社会の形態を破壊した。今までのような独立国
であった日本は今や姿形なく、傀儡というのが正しいだろう。
だからこそ、さらなる破壊をもって我々も正義を成さねばならない。
「正義を成す。たとえ世界が滅ぶとも」
我々は繰り返す。何度も何度も、世界が滅ぶその日まで。
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