第2話


「……どうかしたんですか?」


 そういえば、最近は俺の状況を知ってか知らずかそもそも話しかけてきてくれる霊が減っている……どころかいなくなっていた。


 だから、懐かしいとかも感じたが、それ以上に……ただ純粋に『嬉しかった』のだ。


『あっ、えと実は……』


 しかし、この『霊』はかなり恥ずかしがり屋らしく、下を向いたままモジモジしている。


「……」


 でも、ここで下手に刺激する様な事をしてはいけない。間違っても急かしたり怒ったりしてはいけない。


 そうした瞬間に、彼らは姿を消してしまう。それくらい彼らは、臆病かつ恐がりな人たちが霊になっている場合が多い。


 ただ、彼らはいつも前触れなしで現れる事も多いから、正直どっちもどっちではあるのだが……。


『この病院にいる方で、気になる方がいらっしゃいまして……』

「気になる方……ですか?」


 この言い方だと、どうにも恋愛がらみの話に聞こえる。しかし、霊の様子を見ると……どうも違う様だ。


『はい。なんでも、ある会社の社長さんが入院しているらしいのですが』

「うん」

『ただ、その人。最初は温厚な人だったのですが、ここ最近。怒りっぽくなったらしいんです』

「……なるほど」


 この霊は多分。その人と何か関係がある人なのだろう。そうでなければ、わざわざ俺の元に来る必要が無い。


 しかし、入院中のストレスによってイライラが溜まりやすいというのも事実だ。


 ましてや『会社の社長』ともなれば、自分がこうして入院している間は落ち着かないだろう。


 だから、ただ単純に『入院によるストレス』の可能性も否定出来ない。


『でも、ある日突然人が変わったように怒りっぽくなって……』

「…………」


 この霊の言うとおり「ある日突然」というなると、ある可能性が出てくる。ただ、確証は何もないが……。


「……具体的にどんな感じですか?」

『え』

「具体的にどんな感じで怒っているのですか?」

『あっ、えと。病室の外で話しているのを聞いたのですが、なんでも元々は会社の人たちを優先的に考える人だったらしいです』

「つまり、人材優先。よりよく働けるように努めていた……と」

『はい。でも、それが……利益優先になってしまった……と』


 利益優先……それ自体は良いこと。いや、最終的には利益を考えなければならないとは思う。


 兄さんもそこら辺はかなりシビヤだ。それでも、働く人たちのために色々と頑張っている。


 徐々に変わってきた……とか、利益が落ちた……とか色々要因は考えられるが、霊に聞いた限りそれはないらしい。


 どうやらその社長が仕事をしているパソコンの画面を見たようだ。


 パソコンを見ただけで分かるのだから、この霊はそういった経理の仕事をしていたのだろう。


 ただ、今の話が本当なら『ある可能性』が高くなる。そう『カード』が関係している……という可能性が――。

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