第4話
「……っ!」
俺は思わず、大声を出してしまった自分の口を押えたが、学校ではまだ卒業式の余韻が残っている事もあり、俺の声は聞こえていなかった様だ。
「なっ、なんでここに?」
そのことに安堵しながらも、気を取り直して小声で目の前にいる『
「…………」
確かに、兄さんの手紙には『卒業式の後』とは書かれていたが……まさか本当に『卒業式の後』に来るとは思っていない。
せいぜい来るのは明日か明後日……もっと言えば『春休み』だと、思って……というか最初はそう書いてあったはずだ。
それがどうして『卒業式の後』となったのかは分からない……が、たっだ単純に兄さんが「どっちもそう変わらない」と思ってそう書いた……なんて可能性も否定は出来ない。
兄さんはそういった『部分』は省略……というか、適当にしてしまう事が実は何度かあった。
「……卒業式の後に行くように言われていたので」
千鶴さんの「言われていた」という言葉から察するに、宗玄さんからそう言われていたのだろう。
「…………」
いや、だからそれにしたっていくらなんでも『式の後』とは言え、その後すぐに来るとは……って、コレは何度目だ? さすがに自分で言っていて空しくなってくる。
「…………」
でもまぁ、千鶴さんは昔から『真面目』ではあった。
ただ、残念なことに、千鶴さんの『真面目』は普通の『それ』とは少しズレがあり……というか、多分『真面目』というより『人の言葉をそのまま字面通り』に受け止めてしまう人なのだろう。
だから、今回も宗玄さんの言葉をそのまま……それこそ字面通りに受け止めてしまい、式のあった『今日』で、なおかつ『式が終わる』ちょうどの『このタイミング』に来てしまったのだろう。
そりゃあ遅刻するよりは、早く来た方が断然いい。
いいのだが……千鶴さんが校門にいて、なおかつ俺と話している……という今の状況を他の人たちに見られるのは非常にマズい。
空にしたって千鶴さんにしたって『女性』である。
今はいないが、
今でこそ傍目は『平穏』でなおかつ『目立たない』学校生活を送っている俺にとって、そんな『変な噂』が広まっては、今まで通りにはいかなくなる。
――非常に困る。傍目ではそう見えていても、今の俺にとっては色々手一杯なのだ。これ以上面倒事が増えるのは御免だ。
そう考えた俺は――。
「とっ、とりあえず場所を変えよう」
「……」
そう提案すると、千鶴さんも俺の意図に気が付いたのか無言で頷き、俺たちはそそくさとその場から急いで離れた。
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