第5話
「ん……?」
俺は突然感じた違和感……しかし、体感的には寒くもなく、熱くもない……。
「……」
正直、気味の悪いよく分からない感覚に俺は目を開けた……。
「……え」
目を開けるとそこに広がるのは……白い『何か』だ。
「……」
とりあえず、足は『何か』を踏みしめている感覚はある。つまり、空中に浮いている訳ではないと……いうことになる。
「……えと」
俺は落ち着いきながら状況を整理しようとした。元々『幽霊たち』により不思議体験には普通の人と比べて幾分か慣れている。
その様々な体験おかげで俺は特にパニックになることもなく落ち着いて辺りを見渡す事が出来た。
これで刹那でもいようものなら落ち着いて状況の整理すら出来ない……というか、させてもらえなかっただろう。
「そうは言ったものの」
正直、俺がなぜこんな状況になっているのか……心当たりは全くない。それに、確か俺はついさっき自分のベッドに入って寝たはずなのだが――――。
なぜ俺は立っているのか……というかベッドはどこへ?
「????」
そんな色々な疑問が浮かんでは消え、浮かんでは……と頭の中でぐるぐると回っている。
「でもまぁ、とりあえず……」
もう一度辺りを見渡した。そもそもここが『どこ』で『何』なのか。まずはそこからが今、この現状を知るために必要な情報だ。
「それにしても……先が見えないな」
どんなに目を凝らして辺りを見渡してもあるのは白い霧だけ……。これでは自分が今、どこにいるのか……それすら分からない。
これがまぁ『現実』だったとすれば……俺は無意識に訳の分からない『白い霧に囲まれた場所』に来た事。
「……だとすれば」
試しに俺は自分の頬をつねってみた。
「いっ……たくない」
どんなに力を入れても全く痛みはない。それどころか、自分がどれだけ力を入れてつねっているのか分からない。
正直、変な感覚ではあるが、とりあえずここが『現実』ではない……という事は分かった。
「……ここは『夢』の中なのか?」
そうなると、ここがどこなのか――なんとなく分かった気がした。
俺はついさっき、寝たばかりで正直、今自分が置かれているの状況が完璧に分かっている……訳ではない。
「まぁ、それはいいとして……」
これからどうするか……という事が重要だ。下手に動いて崖にでも落ちればそれこそ一大事だ。
もし、ここで多分ないとは思うが、仮に死んだ場合、どうなるのだろうか……。
「…………」
それを考えるとゾッとする。まぁ、大抵夢の中で死んでしまった場合『目が覚める』訳である。
だが……なぜか……俺は不思議と感じた危機感が募っていた。
「はぁ……」
俺はため息をつき、何度も見た自分の周辺をもう一度見ると……。
「ん?」
ついさっきまで、包まれていた霧がいつの間にか晴れていた。
「…………」
ここは……草原か?
足元も先程まで『全く』と言っていい程まで何も見えなかったが、今では足元も目の前、空も景色がよく見えている。
「綺麗だな……」
空は雲一つない綺麗な青空とあまり長くない草が印象的で風景画の題材にピッタリだ。
「……この景色」
少し身に覚えがある。
「…………」
しかし、どこで見たのかどうも思い出せない……。
ここまで綺麗な場所はそうそう見つからないはずだ。しかし、この場所を『夢』以外で見た覚えは……なんとなくあるのだが……。
なぜかそれが『思い出せない』のだ。しかし、どこか普通に『忘れた』とは違う気がする。
「はぁ……」
なんか……今日はずっとため息ばかりついているような気がする。
「だが……」
ここが『夢』であるのであれば……。
「…………」
――いや、それはないだろう。
しかし、俺はすぐに過った『考え』を自分自身で否定した。
だが、正直な話。否定したのも明確な『根拠』はどこにもない。それに今までもここまで鮮明ではないが『夢』を当然見る事はあった。
そして今も当然『夢』を見る。
そして、問題なのは……今まで『妹』の夢が出てきたことがあるのは妹が生きていた時の『たった一度』だけだという事である。
つまり、その俺が見た『一度』だけということは『偶然』という事も十分ありえる話だという事だ。
「それに……」
目の前に広がっているこの景色が果たして夢に関係のあるものなのか……。それも正直、分からない。
だから、一瞬でも俺の頭に過ったこの考えは『確証がない』という理由で、自分の中で却下した。
「それにしても……」
だいぶ晴れた視界を俺は再度確認した。
日本語で綺麗な風景は『心を洗う様』とか『洗われる様』だと表現する事がある。今までそんな事を思ったことはなかった。
だが、この景色を見たらなんとなく……それが分かる気がした。
だが、感動もしていられないのが残念ながら今、自分が置かれている状況である。
「ん……?」
霧が晴れるたった今まで、何となく『見られて』いた様な気はしていたが、今は何となく気配で分かる。
「……」
あまり良い気分はしないが、逆にこれは『チャンス』かも知れない。
そうたった今、『影』が通ったということは……俺以外の『何か』がいる……ということになる。
「だったら……」
この『チャンス』を生かさない手はない。それに『ここ』を知っている人間であれは正直、ありがたい話だ。
それこそ色々『聞きたい』事がある。
「……」
そんな俺の気持ちを知って知らずかその『人影』は動かず、ジッ……とその場に止まっている。
「……」
もし、このまま動かなければ「自分から話しかけなくてはいけないか?」と思った瞬間――。
「……っ!」
しかし、その影はなぜかそのまま動き出した。
「…………」
このまま何もしない……なんてという選択肢は俺の中にはなく、その影の後をゆっくりと……気づかれないように追いかけることにした。
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