第4話
「……」
今更ながら……俺はあまり瞬の事を知らなかった様に思う。もちろん、自分から聞いたわけじゃないのだから仕方がない。
俺が聞かなければ当然、瞬も自分からは言わない。
それで……気が付いたら今の状況だ。瞬は明らかに悩んでいる。その『何に』という事も分かっている。
でも、俺は何も言ってやれない。それがもどかしい……。
「はぁ……考えても仕方ない」
いくら頭で考えてもこのままでは埒が明かない。
元々俺は頭で考えるタイプじゃない。それは学校の成績なんて関係なく、その人自身の性格などが関係している……と思う。
とにかくこのまま考え続けても今の状況が変わるとは思えない。
「……よしっ」
気を取り戻し、洗面所から出ると……俺はそのままリビングの方へと向かったのだった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はぁ、おはよう」
「あら、おはよう……」
「……何?」
「いや、刹那がこんな時間に起きるなんて珍しいと思って」
どうやら母さんとしてはこんな朝早くに俺が起きている事自体珍しい様だ。
確かに、中学の時は文化部だったし高校は部活動にすら入っていないから朝早くに起きるのなんて遠足とか修学旅行の『そもそも集合時間が早い時』ぐらいだ。
それ以外の平日は……まぁ遅刻ギリギリでいつも息を切らしている。でも、それも勉強に力を入れている最近は随分と減ったけど……休日なんて大体お昼近くまで寝ている。
「……」
そういえば……前に一度だけ、瞬が遅刻ギリギリに来たことがあったけど……結局詳しい事は聞いていないな。
「……明日は雪でも降るのかしら」
「いや、今は『冬』だから雪が降るのはおかしくないと思うよ」
「あら、そうだったわね」
「……」
そりゃあ瞬や龍紀からすれば『成績の悪い残念なヤツ』に含まれると思うけど……母さんも結構すごいと思う。
「どうしたの? 考えこんじゃって」
「ん? いや……何でもない」
たまにとんでもない事を言い出す母さんだけれど、案外人の事は見ている。それでいて相手の話も相槌を打ちながらキチンと聞いている。
だから、母さんは『聞き上手』な人なんだと思う。
「……」
そういえば、修学旅行に勝手について来た時……あの謎の少女『
一体……どこで出会い、一緒に行動をする……という話になったのだろうか。
「そう? じゃあ、朝ごはん食べちゃって」
「うっ、うん」
なんて聞く暇もなく、母さんはせわしなく台所へと行ってしまった。
「……聞きそびれた」
しかし、まだチャンスはある。台所にいったところで、せいぜい味噌汁を温める……とかその程度ですぐに戻ってくるはずだ。
俺の家は立派な見た目ではあるけど、決して『執事』とか『メイド』がいるわけじゃない。
……たまに掃除とかの家事をしてくれる『お手伝いさん』はいるけど、それ以外は普通の家と何ら変わりない。
「……」
――なんて出会ったばかりの頃、瞬に言った事があったけど……そういえば、あまり驚いていなかった。
もしかしたら、瞬がいた『家』には『執事』がいたのかも知れない。なぜなら『龍ヶ崎家』は、とんでもないお金持ちなのだから。
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