第12話
「どうかしたか? 実苑?」
「??」
「いや、なんか……透けてないか?」
「そっ……そうだな。たっ、確かに」
実苑さんの言葉に聡さんも頷いた。
「……」
俺はその言葉にもう一度『蠍』を見ると……。言われてみれば……確かに巨大『蠍』は向こうの景色が見える程透けている。
「…………」
「どうかしたか? 空」
その蠍の姿を見ながら、空はなぜか上の空だった。
「いえ……あの……」
空は言いにくそうに蠍を見ている事で、俺もようやく気づいた。
「もしかして……こいつが?」
「たっ……多分」
でも、瞬から聞かされていた『カード』に関連のある奴かも知れない……と感じてはいたが、見たのが初めてだった事もあり、正直、まだ信じられずにいる。
「……」
そこである事に俺はひっかかりを憶えた。
瞬の話によれば『カード』はその星座に由来した場所や出来事、メッセージによって呼び出されるはずだ。
しかし、今回はそのどれにも当てはまらない。そう思っていた………………。
『貴様らが俺を起こしたのか?』
突然、『蠍』が俺たちに話始めたのだ。
「!」
「………………」
俺と実苑さんは驚いていたが、聡さんと空は表情一つ変えずに『蠍』を見ている。
やはり『年の功』と言うにはまだ早いが「人生経験の差がこれだけの落ち着けるんだな」と思っていた俺は、この後すぐに後悔することになった……。
「さっ……!」
「??」
俺は実苑さんの謎の言葉に首をひねた。そして、実苑さんはすぐに言葉を続けた。
「
「っ……!」
この大声を俺は聞いて驚いていたが、聡さんは両耳を押さえていた。
『……』
どうやらそれは蠍も同じだったらしく、かなり迷惑そうに……うるさそうにしていた。ただ、表情とかそういった事は分からないのだ、なんとなく……ではある。
『全く、なぜ人間共はこう……うるさいんだ?』
「…………」
こうしてみると『蠍座』は幾分か人間らしかった。
「まぁ、しゃべっていることはこの際置いておくとして……だな」
置いておくのか……と俺はそう思ったが、そう言いながら聡さんは未だに興奮している実苑さんを放っておいて話を進めた。
「……」
こうしてみると「聡さんが一番、肝据わっている人だな……」と感じる。
「とりあえず、なんでお前はここにいるんだ?」
ただ、ここまで単刀直入な問いかけには俺も驚いたけど……。
『あー、実は最近おかしな事が起きていてさ……』
「おかしな事?」
そして、何事もなく会話が続いていること……というよりも、蠍座の話し方に更に驚いた。
『あー。なんか……操られている感じがしてなぁ……』
「操られている……」
そう小さく呟いたのは空だ。
『いやぁ、俺たちはそこにいる『お嬢ちゃん』に具現化させられるんだけど……』
蠍座はチラッと空を見た。
『ここ最近、具現化出来なくなっている奴がいるだ』
「お前は出来ているだろ?」
ん…
『それは『見る力』と『見せる力』の強い奴のおかげだからな。これでも完全には出来ていないんだよ……』
「……」
「……」
今度は聡さんと実苑さんを見て、そして今度は自分の姿を改めて見た。
「……」
確かにその姿は透けたままだ。
『それに、由来とか関係なくなってきているし。なんかよく分からない状況になっていて混乱している奴まで出て来ている始末だし……』
「……おい」
『ん?』
「なんか……さらに透けてないか?」
『え?』
聡さんの言葉に蠍座は驚いてもう一度自分の姿を確認した。確かにその姿は最初に見た時よりも透けており、今にも消えそうだった。
『ちぇー、せっかくこの世界に出て来られたのになぁ……』
蠍座は残念そうな顔をしていたが、すぐに吹っ切れたらしく俺たちを再度見た。
『まぁ、とりあえず俺は戻るよ。でも、気をつけなよ。これからどうなるのか……正直、分からないから』
蠍座は最後に忠告をして……姿を消した―――様に見えただけで、実際は……空の手元に『カード』となって戻っていた。
ただ『気をつけろ』という謎の言葉だけを俺たち残して――――。
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