第5話


「……?」


 しばらくすると、俺は何か違和感を覚えた。


「……」


 周囲を見渡すと、俺たちがいた公園ではほとんどの人がいなくなっていた。


 しかし、確か先生たちは「午後三時、十五時には出発する」と言っていたはずだ。でも……俺は『あること』が引っかかった。


「しゅんー!」


 トイレに行っていた刹那は大声で俺を呼び……そして、こう告げた。


「ごめん! 集合場所、ここの山頂だった!」

「……はっ?」


「だから、ここは山頂も含めて全てが『公園』っていう場所だったんだよ!」

「………………」


 俺は無言で刹那の言葉を頭の中で何度も繰り返し、ようやく理解した……が、それ以上に言いたいことがあった。


「それを早く言えっ!!」


 そう大声で叫んだ。


「ごっ、ごめん」

「……」


 しかし、そうは言っても俺に刹那を責められない。


 実は集合場所の説明をしていた時、俺たちはその場にいなかった。ただ、普通であれば先生が探しに来るものだが……。


「……」


 ――その気配すらない。


「今何時だ……」

「えっ、えっと……」


 俺が尋ねると、刹那は自分の付けている腕時計を確認し始めた。


「十四時?」

「こっから行くと……ギリギリだな」


 そうは言っても、自分から行動しなければどうしようもない。


「はぁ、仕方ない。行くか……」

「うっ、うん」


 俺は刹那を連れて本当の集合である『山頂』に向かう事したが……結論だけ言うと、俺たちが集合時間の十五時に『山頂』に行くことは……出来なかった。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「なぁ……この道で合っているのか?」

「……でも、看板はこっちだって書いてあったよね」


「確かに……」

「うーん」


 俺たちが通ってきた道の看板には『山頂はこちら』の文字があったはずだ。しかし、今の俺たちの目の前にある道を見ても……その道は山道になっている。


 ここに来る時も結構すごかった……って、ここはそんなレベルじゃないな。


 確かにみんなで行きの道を歩いていた時は地面がぬかるんでいたものの、草などはきちんと切ってあったけど、この道はそんな整備すらされていない。


「……まさか、あいつら……!」


 すると、俺はここに来る途中で見たあのイジメ集団の表情を思い出した。


 そう、あのイジメ集団に『看板を変えられる』というベタな罠にはめられていたのだ。


「えっ、瞬? どうした?」

「……」


 しかし、それを刹那に言う必要はない。下手に言って刹那の不安を煽ってもいい事なんてない。


 それに……


 気づいた時には俺たちは山の中で二人取り残され、時間は元より帰り道すら分からないくらい辺りは暗くなり始めていた――――。

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