第8話
「……でも、あの子の話を聞いて『カード』の可能性が高くなった」
「そうか?」
空は今の会話から「ほぼ確定」と言ったが、俺は正直分からない。それは「そんな星座……あったか?」という疑問で、俺の考えた限り、それに該当するものはなかった。
「たぶん『魚座』のカードだと思う。」
「ん? 『魚座』って……星占いとかに出てくるあれか?」
「そう、それ。神話は……由来の話をするにはまず、『山羊座』が関わってくるんだけど」
「山羊座?」
俺は「山羊座と一体何の関係が……?」と思ったが空曰く、実は山羊座と魚座にはある『共通点』があるというのだ。
「それで? その共通点っていうのはなんだ?」
「うん。実は山羊座が山羊になった宴に関係があって、魚座になった女神アフロディテとその子供エロスもその宴に参加していた」
「参加していた……」
「うん」
しかし、その『山羊座』も山羊と魚が合体した姿……というなんとも奇妙なモノだった。
「…………」
そういえば、俺が最初に見た時、あの山羊座は空間を……確かに『泳いでいた』が、それは魚が合体していたが故……とあの時の俺は勝手にそう解釈していた。
「それで、怪物が現れたとき、アフロディテは親子が離れることのないよう一本のリボンで互いの体をしっかりと結び、そして二人はそれぞれ魚に姿を変え、ナイル川へと逃れた」
「逃げた……」
「うん。そして魚となった二人の尾にはリボンが固く結ばれたままで親子は川の中ではぐれずに済んだらしい。そして、この母子愛を讃えて魚になり、リボンを結んだ二人の姿をそのまま星座にした……というのが『魚座』の由来」
「……なるほど。で……どうすればいいんだ?」
空の由来が終わってすぐに俺は空に尋ねたのだが……。
「…………」
なぜか空は、俺の問いかけに一瞬間を置いた。
「なんだ、今の間は……」
「いや……分からないことを聞くのは悪くないと思う。でも、すぐに聞くのもどうかと……思う」
「いや、俺もちゃんと考えた上で聞いているんだが……」
「…………」
どうやら俺の聞くタイミングが……というより『間』が悪かったのか、今の俺の言葉が空には「とりあえず早く終わらせたい」と聞こえた様だ。
もちろん、俺は「そんなつもりではなかった……」と言いたいところだが、実際のところは……。
「とっ、とりあえず……今の由来の話から考えると『川』が関係するというのは分かる」
「…………」
たっだ、それ以上の事は全く分からない……。空には悪いが、ここはやはり「どうして『カード』の可能性が高くなったのか」という理由を教えてもらわない事には一向に事態の解決は出来そうにない。
「……そもそも『魚座』は親子の愛情の形を表したカードだから、その男の子の母親が変わったのがつい最近の話なら『カード』の可能性は十分あり得る」
「つまり……。とりあえず、この周辺の川を地道に見るしかない……か」
正直なところ「面倒だな」という気持ちがなかったかと言われれば完全な嘘だ。それに「これが冬ではなく夏ならなぁ……」とも思ってしまったほどだった……。
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