まんまるおつきさま
お月様しぼったら、何が落ちてくる?
甘くてすっぱい蜂蜜レモン
ランプのような光の粒たち
へちまの花びらはらはらこぼれて
するりと溶けたバターをぺろり
地球に恋した御付きの月を
抱きしめるようにぎゅうっとしぼれば
詰まった夢がほろり、あふれる
*
誰にでも、二度見する瞬間がある。わたしの場合、ジャイアンのTシャツを着ている人が視界に入ったときや、夏のコンクリートの上に例の虫らしきものが転がっていたときなんかがそうだ。(二度見したことで、Gではなくチョコレートだということがわかった)
わたしは他の人より二度見する回数が多い自信がある。それも、絵に描いたような二度見。ほとんどが、空に月を見つけたときだ。
それは朝だったり、夜だったりする。視界のすみに、きいろく、または白く浮かぶものが見える。はっ、と二度見すると、丸かったり、欠けていたり、まっぷたつだったりする月が空にはりついている。三秒ほど静止し、月だなあ、と思って、ようやく行動を再開する。
そんなふうになったのは、あのときからだ。中学生のころ、部活が終わった学校帰り。田舎だったから、畑がどこまでも広がっていた。下ばかり見て歩く子だったわたしは、うつむき足を進める。ふと顔をあげ、左を見ると空には赤くまるく大きなものがはりついていた。え? 赤くまるく大きなものがはりついていた。え!?
地平線の近く、いつもの何倍もの迫力でこちらを覗く赤い月。しばらく動けなかった。その日から、前を向いて歩くようになったかわりに、二度見のプロになったのだ。
しかしプロといえど、わたしの二度見の精度は低い。よく黄信号やら家の灯りやらを月と見間違って、がっかりしている。
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