きみを包みこむ音色

 ねらいを定めて魔法をかけたら

 みごとに星が落っこちた

 ころん、ぽろんと転がして

 できあがったのがオルゴール


 雲がもくもくかくまう夜は

 さらさらそよそよ、さあさあふわり

 聴こえない音かきあつめ

 星のとなりに飾っていこう


 そうしてできた宝の箱は

 雨の窓辺をやさしく包む



   *



 伊豆高原には、なぞのミュージアムがたくさんある。ものすごく怪しかったり、経営が心配になったりするところが多いけれど、オルゴール館はわりと落ち着いていて、お客さんもそれなりにいる。

 想像するような、かわいい箱のオルゴールは展示物ではない。全てお土産用だ。リサイクルショップの家具コーナーみたいな展示場には、見たことのない仕組みで音がなるものや歴史的な価値があるもの、想像をはるかにこえる大きさのものがずらりと並んでいる。一時間に一回の演奏会では、それらが元気に音楽を奏でるところを見せてもらえる。

 遊園地の入り口みたいな、巨大な自動演奏楽器は圧巻だった。電源が入ると、ぶううん、という機械音がその場を支配して、見ているひとたちは、おお……と声を漏らし身構える。一呼吸おいて音量最大のパイプオルガンみたいな音を鳴らした演奏楽器の迫力に、最前列で見ていた女の人の肩はびくつく。手で耳を覆う人もいる。よく見ると装飾の人形の持つタクトが、本体の大仰さに似合わない小刻みな動きで揺れている。かた、かた。

 オルゴールというと当たり前のように、繊細できらめく音を思い浮かべる。ちょうど、星を転がしたときのような音色。でも必ずしもそうとは限らないらしい。

 オルゴール館の通路にしれっと展示されていた金魚やメダカも、ひょっとしたら誰かにとってのオルゴールだったのかもしれない。

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