魔法指導担当実施中

 午前九時三十分。

 練習開始の三十分前に出て、取り敢えずグラウンドを練習仕様に整備開始。

「五メートルごとでいいよね」

「充分だろ」

 ポニテとツインテが五十メートル巻きの巻き尺で五メートルごとに印をつける。

 そこに私と壁、小木津先輩と多賀さんの四人で的代わりの土人形を土魔法で作る。

 更に他の面々で大型の氷柱だとか色々セット。

 練習開始十分前にはそれなりの魔法訓練場が出来上がった。


「これを作るにも結構魔法を使ったよね」

「確かに」

「私は本来土魔法は得意じゃないけれどな」

「私もだ」

「というか土魔法得意なのって工兵とかドワーフだよね、基本」

「佐和さん呼んでくればよかったな」

「でもあの人は武器関係で忙しいでしょ、きっと」

「それにこれでも攻撃魔法の訓練には充分だろう」


 五メートルごとに百メートルまで、標的の土人形や氷柱がずらりと並んでいる。

 更にその先には巨大な氷壁を築いて被害が他に及ばないよう配慮した。

 急ごしらえの攻撃魔法練習場としてはなかなかいい出来だと思う。

 おかげでD班皆さんの魔力はへろへろ状態だ。


 練習に他の班の皆さんがやってきはじめる。

「何この始皇帝陵の兵馬俑みたいなの」

「訓練用に作った標的だよ」

「よく作ったね、こんなに」

 確かに兵馬俑みたいだなこれは。

 並んでいる方向が違うけれども。

 大体十人くらい出てきたので取り敢えず始めるとする。


「まず練習したい魔法は何?火土風水氷雷とかの系統か、特殊な魔法かで」

「火と水は少し使えるので、今回は氷で」

「氷だと私だね」

 ポニテは色々な魔法を使えるが、D班の中では一番水・氷系が得意なので今回はその担当をしてもらう。

「私は火炎系統で」

「じゃあ私ね」

 これは極悪女だ。


 教える人数が今のところ少ないので、ほぼマンツーマンでの指導が始まる。

 なお私は遊軍扱いだ。

 普通の魔法系統に属さない特殊魔法担当だが、今のところ相手がいない。

 でも仕事が無い訳では無い。


「遙、移動する魔物の攻撃練習したいからゴーレム出して」

「わかった。場所は?」

「七メートル位の所を左右にうろうろ。最初はゆっくり目で」

「わかった」

「こっちもゴーレムだ。魔法槍での対戦用でやっぱりゆっくり動く奴」

「ほい了解」


 実際対戦用ゴーレムを操るだけでも結構忙しい。

 ゴーレムそのものは簡単なプログラムというか論理命令で自律制御。

 でも万が一相手に怪我させると問題なので常に監視はしている。

 それにゴーレム作動中は魔力を使うので結構大変だ。


 なお論理命令で自律制御するゴーレムは私と小木津先輩しか作れない。

 あとの方々は常にゴーレムに命令を飛ばして動かす必要がある模様。

 ちなみに私のゴーレム制御論理命令はPython準拠だ。

 プログラム風に紙に記載してゴーレムに埋め込む形で動かす。

 なお小木津先輩は生活班の磯原先輩にゴーレム魔法を教えている。

 磯原先輩は『家事をゴーレムにやらせる!』という夢があるらしい。

 マッドゴーレムだと汚れるのでウッドゴーレムの製作と操作からやっている。


 そんな感じで訓練していると徐々に人数が増えてきた。

 生活班の買い出しや製造班の初期改造が終わった模様だ。

 練習する魔法にあわせて壁が担当を振り分ける。

 今回の人気は水・氷系らしい。

 火炎系は森とか燃えるものがある場所で使いにくいし妥当だな。

 ポニテ担当が多いので少し手伝ってやるか。

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