第三章 夏合宿
第十一話 夏休みの前に
梅雨明けの暗雲
本日近畿地方の梅雨が明けたと発表があった。
期末テストも無事終わって教室内の雰囲気はもう夏休み一色だ。
「松戸氏は夏休みはどんな予定でおじゃる?」
昼休み、夜ノ森が聞いてくる。
「夏休みと言っても半分は夏季講習があるしなあ。残りで実家に帰省すれば終わってしまいそうだ」
夏季講習と言っても予備校とかのものではない。
この学校は某予備校と提携し、夏休み中に受験対策も兼ねた特別授業を行うのだ。
場所が奥地で通常の予備校の夏季講習が受けられないことの補完措置らしい。
受験対策なら三年生かせめて二年生からやればいいのに一年生までしっかり対象になっている。
そんな訳で実質的な夏休み期間は十日前後しかない。
大変悲しい事実である。
「取り敢えず拙者は八月に、視文研と漫研合同の東京合宿に行ってくるぞよ。ビッグサイトで資料を狩ってくるでおじゃる。亘理殿も一緒でおじゃる」
「女子部員も一緒だぞ。勿論泊まる部屋は違うけれどさ」
「小生はうちの女子部員は苦手でおじゃる。男を見る目が怖いでおじゃる」
「うちも怖い先輩いるなあ。顔は美人なんだけれどさ、見える範囲の男性を全て脳内カプにする癖がある。まず最初に受けか攻めかきいてくるもんな」
「それはひょっとして三年の坂元先輩でおじゃるか」
「そうそう。男は顔か性格かという女子の議論で、『男は尻』と主張したという」
「あの御方はもう末期でおじゃるよ」
確かにそれは怖いかもしれない。
でもうちの研究会にも怖い先輩がいるなあ、山ほど。
そう思うけれど勿論口には出せない。
どうせうちも合宿なんだろうなあ。
またあの熊野の山奥の温泉だろうか。
「まあうちの以外にも色々な研究会が合宿を出しているでおじゃるよ。会員以外でも参加OKの研究会が結構多いでおじゃる。視文研と漫研合同合宿もそういった外部参加大歓迎な合宿でおじゃるよ」
「合宿の一覧表はあるぞ」
山下がこっちにプリント一枚を寄越してきた。
見ると『夏季休暇中・各課外活動合宿予定一覧』と書いてある。
「何と、便利なものがあるでおじゃるな」
「生徒会でまとめた奴だ。まだベータ版だからあまりおおっぴらにするなよ」
山下はいつのまにか生徒会事務局に潜り込んでいた。
うちの生徒会は役職以外の事務方は課外活動と同じ扱いなので、こういった人間もいるわけだ。
「どれどれ、うむうむ。生徒会は南伊勢町で海水浴キャンプだと! なんとうらやましけしからん!」
「生徒会はいいぞ。女子が多いし、美人で気さくな先輩ばかりだからな。目指せ夏のアヴァンチュール! 俺は一足先に男になる!」
「生徒会は風紀に煩い方も多いのでそうもいかないでおじゃるよ。顧問もいるでおじゃる」
「まあそうなんだけれどさ、夢を見るのは自由だろ」
「うちの東京合宿も入っているでおじゃる」
どれどれと思って見てみる。
課外活動名、日程、場所、主な活動内容、部外生徒の参加可不可が書いてある。
そして私は悲しいことにある研究会の予定を見つけてしまった。
文化研究会、活動予定は四泊五日、場所は愛媛県、部外参加不可とある。
つまり合宿はやっぱりある訳だ。
思わずがっくりときてしまう。
「どうした松戸、何かあったか」
「憧れの女の子のいるところが部外不可だったとかじゃね」
「松戸氏は紳士なのでそんな事は無いでおじゃるよ」
そう、私の行動には本来女子など関係無い。
それに本来の私の理想の休みとはひたすら寝て過ごす事だ。
ただ大魔王の件とかあるので仕方無く自分とともに周りを鍛えているだけだ。
問題はその周りというのが女子ばかりだという処なのだけれど。
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