第八話 魔物討伐戦

魔物討伐の朝

 さて、色々問題頻発のこの合宿もついに大詰めを迎えた。

 三日目の朝、D班は合宿場から花梨先輩ラスボスの魔法で移動する。

 これから魔物討伐による実戦訓練だ。

 なお今回はD班の面子に花梨先輩ラスボスと神立先輩が加わっている。

 この前の戦闘で見た限りでは神立先輩は壁以上の使い手だ。

 ある意味今回の戦闘でその腕を見られる事を楽しみにしている。

 やっぱり強い人の技術は色々参考になるからな。


「さて、ここから前の道を谷に沿ってのぼっていって洞窟の前まで行きます。ここから先ちょっと入ったところからもう魔物の勢力圏です。気を抜かないよう心がけて下さい」

 なるほど。


「まず最初は遠距離で魔物を倒す練習です。主な魔物は一本ただらと火の玉、どっちも動きは早いですが耐久力に乏しい魔物です。ただし数で攻められると大変ですので距離のある状態で確実に倒して下さい。

 まず洞窟までは先頭が遙さんと絵麻さん、二番目が英美里さんと理澄さん。三番目が杏奈さんと百合亜さん、四番目が私と紅莉栖さん、殿を沙羅でお願いします。基本は正面より左前方の魔物を杏奈さん、右前方の魔物を百合亜さんが倒して下さい。後方は基本的に沙羅に任せます。

 また敵出現時にはある程度指示をしますので宜しくお願いします」

 なるほど、本格的なパーティ編成だ。


「今回の目的は何処までだ」

「洞窟外の魔物を一掃するまでです。洞窟内はまだ魔物が強いので、あくまで洞窟の外に出てきた魔物を討伐すると言う形でお願いします」

「わかった」

「それでは皆さんの武装をお渡しします」

 練習用ではない本格的な剣が出てくる。

 私のは槍だが薙刀に近いフォルムで長めの片刃がついているタイプだ。

 私が前世で巡察騎士時代に使っていた『黒槍』と同じデザイン。

「何故これを知っているんだ」

 思わずそう言ってしまう。


「それぞれの武装は紅莉栖さんの魔法で最適なものを確認して使っています。この世界にはオリハルコンやミスリルはありませんが、切れ味そのものは鋼の質もあって元の世界のもの以上だと思います」

 そんな事まで魔法でわかるのか。

 ツインテの魔法、洒落にならないな。


「でもこんなのどうやって作ったんだ。日本だとこれは銃刀法違反だろ」

「武器製作の魔法持ちもいるからね、真理ちゃんとか。材料さえあれば作れるよ。ただ見つかると危険だから普段は花梨先輩に隠して貰っているけれど」

 なるほど。


 軽く八相に構えて基本の型で振るってみる。

 悪くない、いいバランスだ。

 他の皆さんもそれぞれ剣だの魔法杖だのを確認している。

 あとは沙羅先輩と英美里が中型、理澄がバックラー型の盾装備だ。

「装備の多少の調整は私でも出来るよ。何か納得いかなければ言ってね」

 ツインテがそんな事を言う。

 でも私の槍は今のところ完璧に近い出来だ。

 いままでも側にずっとあったかのように手に馴染む。


「試し斬りをしていいか」

「手入れをする時間が無いので負担が無い程度で願います」

 そうだな。

 そんな訳で周りを見てみる。

 直径二十センチ位の細めの木を発見。

 これなら間伐でどうせ切られるだろうから試し斬りをしてもいいだろう。

 間合いをとって槍を構える。

 呼吸を合わせ、魔力を注ぐとともに袈裟懸けに振るう。

 すっ、想像以上にあっさりと刃が通った。

 少しした後、木がゆっくり傾いで倒れる。


「危ないわね。こっちに倒れなかったからいいけれど」

「右方向に倒れるよう斬った。でもこの斬れ味は予想以上だ」

 以前の愛槍『黒槍』より斬れ味そのものは上のような気がする。

「この世界の冶金技術は優れていますから。単なる鉄系材料なのですが下手なミスリルよりも普通のものに対しての性能は上ではないかと思います」

「そのようだ」

 全盛期程では無いがこれなら今の私でもそれなりに戦える気がする。


「さて、それぞれ武器に慣れたら出発します」

 そんな訳で一行は魔物討伐へと出発した。



 

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