第二回例会

「今日の議題はGWに行う合宿についてですわ」

 会長である花梨先輩ラスボスがそう宣言する。

「今回のGWは後半が五月三日から六日までの四連休になります。この機会を使って各自魔法力の向上を図るとともに会員相互の融和を図る事を目的として合宿を行うわけです。

 そんな訳で合宿委員の内原さん、後は宜しくお願いします」


 立ち上がったのは私が話したことがない先輩だ。

 ここ文化研究会は戦闘を行う魔女以外に魔法を少しだけ使える程度の魔女も混じっている。

 そんな訳で部員は合計二十人近くいる模様だ。

 正確な人数は数えると固まりそうなので不明。


「それでは合宿についてご説明致します。まず場所は二年生以上の方は御存知の通り学園の第二合宿場、ここから十キロほど離れたところにある学校の施設です。元々が民宿で温泉もあり大変いいところです」

 なるほど、でも私は行かないから関係無いよな。

「なお合宿は全員参加となります。費用は五千円を予定しています。詳細は後程パンフレットをお配りしますので宜しくお願いします」


 何! 全員参加だと!

 私は男子だし例外だよな、聞きたいけれどこの人数の女子の中では口が動かない。

「はい質問です」

 ポニテが手を上げる。

「杏奈さんどうぞ」

「遙も当然参加ですよね!」

 ポニテ、なんて事を言うのだ。

 でも内原先輩は何と頷いている。

「勿論です。短期間の指導で百合亜さんの風魔法を実戦レベルまで上げたその指導力は、是非合宿でも発揮していただきたいと思います」

 何でそうなる!

 女子ばかりの合宿に男子一人だぞ! 少しは外聞とか常識を考えてくれ!

 そう思っても口に出せないのが辛いところだ。

 何せ女子が多すぎて毎度おなじみ身体固化(弱)になっている。


「それではこれからパンフレットをお配りします。お手元に渡りましたらページの抜けがないかご確認の上、中央に挟みましたカードをお出し下さい」

 A5サイズのパンフレットが配られる。

 私は状態不良中なので魔法でパンフレットを開く。

 中央の一枚だけ紙が違って白い上質紙だった。

『名前』とか『前世または前世界の国・世界名称』とか『使用可能魔法』とかの項目が色々書いてある。

「これは自己紹介シートになっています。今週の金曜日放課後までに項目を埋めた上、私又は三年生の方へ提出願います。なお真偽魔法で判定しますので嘘は書かないようお願いします。記載例はパンフレットに記載の通りです」


 なんですと!

 私はここでは風魔法と簡単な補助魔法しか使えないことにしてある。

 赤塚さんだけは他に色々魔法を使えることを知っているが、今のところ黙っていてくれている。

 実際全属性それなりに使えるとバレたら面倒な事になるのは間違いない。

 風魔法の件で赤塚さんの指導を押しつけられたしな。


 ただ赤塚さんは真面目だし熱心だし嫌いではない。

 赤塚さん相手なら教えるのも楽しいと思ってしまう位だ。

 ついつい風だけでなく火魔法水魔法まで最近は教えてしまっているし。

 でも他の面々の指導は頼むからやらせないでくれ。

 全員が赤塚さんのように可愛い訳じゃないし。


 そう思って私はとんでもない事に気づく。

 赤塚さんの事を可愛いと思っているだって!

 そんな訳は私に限ってあり得ない。

 何せ女性は苦手で魔法修行の敵、ついでに言うと平穏の敵でもある。

 確かに赤塚さんは他よりましだがそれだけの事。

 そう思いつつも赤塚さんの事を色々考えた結果、いつも以上に固化してしまう。

 結果、例会が終わっても魔法移動すら出来ない位に固まってしまった。

 身体固化(中)といったところだろうか。


「遙か何故か一段と固まっているな」

 これは壁の声。

「人数が多かったせいじゃない? ちょっと試してみようか」

 その声と同時に背中に暖かい柔らかい感触。

 やめてくれポニテ、固化(強)だと呼吸すら困難になるんだ!

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