戦闘ならまだ楽だ
「花梨先輩は自衛程度の魔法も使えるんですよね」
「ええ、一応」
「ならここで見させていただきます」
問答無用という感じで宣言する。
「でも危ないですわ」
「自衛できるんですよね、なら問題無い筈です」
有無を言わせない。
「念の為に聞いておきますが、今襲ってきている魔物はどんな魔物ですか」
花梨先輩はふっとため息をついてから口を開く。
追い払うのを諦めたようだ。
「今回襲ってきているのは一本ただらと呼ばれている魔物です。地上を一本足で跳ねて移動し、音波攻撃を仕掛けてきます。攻撃魔法は水属性以外大体効きますし、物理攻撃の場合は胴体部にある目のような場所が弱点です」
「わかりました」
なら予呪文は
確保できるだけあらかじめ唱えておく。
私の場合は二十発ほど予呪文を唱えておくことが可能だ。
これでいざとなったら意識するだけで魔法が飛ぶ。
短縮形で唱えるよりも更に早い。
さて前方を
敵は三十体以上、こっちは四人でうち一人はこの前の絵麻先輩だ。
胸を触ってしまった事件を思い出し思わず固まりそうになるのを抑える。
今は非常時、固まっている余裕は無い。
まずは全体的に見て危なそうなところを探す。
左下からやってくる魔物への対処が遅れているようだ。
なら減らしておくとするか。
左手を軽く持ち上げて照準を合わせる。五百メートル位なら大丈夫だろう。
五体の魔物の気配が消えた。思ったより弱い魔物のようだ。
「えっ?」
花梨先輩が何かを言ったようだが無視。
次は何処だ、連射した分の予呪文を補給しながら確認する。
中央付近での戦いは大丈夫そうなので端の方を狙おう。
木々で見えなくても誘導弾なら大丈夫だ。
「
これは予呪文では無く唱えて発射。
木々の上を呪文が迂回して、そして魔物を見つけて一気に降下する。
更に五体が消えた。
一方で林の中で戦っている四人も確実に敵を倒している。
残っているのは既に六体、いや今の瞬間二体が消えた。
そして見る間に残った四体も消えて行く。
無事に勝利という訳か。
『残存気配無し、術式も特に無さそうだよ』
そんな台詞が直接こっちに届いてくる。
魔法音声という奴だがこの声は知らない女子の声だ。
『それでは一度部室へ戻りましょう』
ふっと足元の感覚が無くなる。
あの場の全員に対して移動魔法をかけたようだ。
私の
流石空間魔法特化型と自称するだけのことはある。
そんな訳で戻って来たのはこの前の理科実験準備室だった。
一緒にいるのは花梨先輩と絵麻先輩のほか、女子、女子、女子!
何という事だ! 女子ばかりだ!
「あんな長距離で一気に魔物を倒すなんて凄い!」
活発そうなポニーテールの女の子に両手を取られて思わず固まる。
私は女子が苦手だ。非常時なら別だが今は非常時では無い。
つまりはあのー、そのー、何も言えない状態だ。
固まりすぎて呼吸もろくに出来ない。
でも危険だから予呪文の無効化だけはしておこう。
これでいつ意識が遠くなっても安全だ。
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