2月26日──兄・兄六事件

「えっ兄ちゃん、一体どうしたの?」

 うちの兄きが学校から帰って来たら、なぜか六人に増えていた。

「いや」

「よく分からん」

「さっき」

「沼へ遊びに」

「寄ってから」

「こうなった」

 六人がリレーのように話しだした。

「うざっ⋯⋯」


 原因はよく分からないけど、事件は現場に戻ってみるのが鉄則。

 あたしたちはその沼まで行ってみることにした。

「この沼で」

「釣りをしてから」

「六人に」

「増えた」

「らしい」

「ぞ」

 あたしは沼の水にそっと触れてみた。

「うーん、とくに何の変哲もない沼だけどねぇ」

 その途端、ゴロゴロとお空が鳴ったと思ったら、沼に突如カミナリが落ちた。

「きゃあッ!」

 ピシャーーーーーーーンッ!!

「う」

「わ」

「ぁ」

「ぁ」

「ッ」

「!」


「あれっ!? 妹よ、兄ちゃん無事に一人に戻ったぞ!」

 ああ、なんて自分勝手な兄きなんでしょ。

「ええ」

「それは」

「大変」

「良かった」

「わ」

「ね!」

 あたしたちは六人同時につぶやいた。

「うざっ⋯⋯」



◉2月26日は「二・二六事件の日」

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