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渋谷獏

▶2月1日──匂い

「奴からは犯人の匂いがするんだよ!」

 と全田一警部は叫び、弾丸のように飛び出して行く。

 皆で捜査した限りでは、警部のいう容疑者が犯人である証拠は何もない⋯⋯。にもかかわらず、毎回こんな調子で彼の直感は当たり、難事件を易々と解決してしまうのだ。

 彼曰く「犯罪者には犯人の匂いがする」そうだ。


 しかし、そんな全田一警部も、今回の事件だけはお手上げのようだ。警部が目星を付けていた女の容疑者がいたのだが、どうも最後に来て歯切れが悪く「犯人ではなかったようだ⋯⋯」と言いだす始末だった。

 結局、事件は迷宮入りした。


 あれから数カ月が経ち、容疑者の女が肺癌で死んだ。

 その知らせを聞き、警部はふと呟いた。

「あの犯人の女、やはり亡くなったか」

「えっ、て事はやっぱりあの女が犯人だったんですか!?」

「ああ。だが今回は見逃した」

「一体どうしてです!?」

「俺の両親が亡くなるときに散々嗅いだ嫌な匂い、死の匂いがしたんでなぁ⋯⋯」


 ◉2月1日は「匂いの日」

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