第50話
緑のドラゴンを倒してすぐに、さっき倒れた忍者のパーティーが扉から出てきた。
これで八つの内七つが行き止まりだと分かり、僕らは残った一つを進む事にした。
ぼやぼやしてたらドラゴンが帰って来かねない。
みんなが扉へ入っていく中、さっき来たパーティーは状況を理解したのか、円の中心で立ち止まっていた。
それを見て僕は足を止めた。彼らは自分達が脱落した事に気づいて、立ちすくんだのだ。
三人でのダンジョン攻略は不可能。忍者を助けに行くにせよ。赤のドラゴンを倒さないといけない。人数的にそれは厳しかった。
それは事実上のリセットを意味していた。きっと今その事をボイスチャットで話し合っているんだろう。
他人の事ながら、脱落を見るのはちょっと辛かった。
少し前までの僕らを見ているようだ。けど彼らにもチャンスがないわけじゃない。
僕らがこの先で負ければ、可能性はある。出来ればない方がいい可能性だけど、希望があるならすがるべきだと思う。
僕が彼らの会話を想像していると、仮面を付けた魔術師が気づき、こちらを向いた。
そして、僕にだけ見える個別チャットにこう書き込んだ。
>ありがとう。
「・・・・・・え?」と思わず声が出た。
予想してなかった言葉だった。
そうこうしている内に大きな質量が地面を叩く音がいくつも聞こえてきた。
大きな扉から巨大なドラゴンが五体、ぬっと顔を出す。その口にはやはり炎が含まれていた。
「なにやってんだよヒロト!? 巻き込まれるぞ!」
リュウのその声で僕も扉へと走り出した。
それとほぼ同時にドラゴン達が円の中心へと炎を吐く。強力な攻撃に彼らは為す術なく飲み込まれていった。
その姿を横目で見ながら、僕は扉に入り、通路を走った。
頭の中を様々な考えが巡った。でもあの感謝の意味は最後まではっきりとは分からなかった。
>よい旅を。
魔術師が倒れる瞬間に打ったと思われる最後の文が、ただチャット欄に流れた。
なんだか寂しくなって、僕は目線をチャット欄から離した。
パーティーにも色々あるんだなと、当り前の事を僕は再確認しながら、迫り来る炎からなんとか逃げ切った。
通路を走りきると、そこには大きな階段が現われる。
次の階で最後だ。
そしてそれはこの八人の最後を意味する。
迫り来る戦いを前に、僕は小さく息を吐き、気合いを入れ直した。
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