腐敗せよ朦朧
愛創造
ねつっぽい
ところで。私の脳味噌は何処に棄てたのかしら。知らないのよ。ええ。誰も私の事なんか知らないのよ。お見捨てに成られた父上だって、私の心を忘れたのだから。誰にだって私の精神は解けない。だけれども。可哀想な貴方は私を抱擁して、此処に連れ去ってしまった。終いの幕すらも判らない儘に私を振り回して、蜿蜒と嗤う部屋の中でめまいを引き起こす。惹かれるような貴方の目玉は、そう、早々に私と魅了したわ。邪な舌で舐る姿も、美しくて、愚かで、何てたまらないのでしょうか――止めて。私をそんなにもいじめないで。じんわりと融けるような擦り傷に、悪夢を重ねても途切れない蒼の色が、私を恍惚に成して仕方が無いのよ。貴方。ねぇ。棄てたなんて言わないでちょうだいな。私は今日も昨日も明日も、父上の代わりに貴方を抱くのだから。酷い。酷いわ。なんでひどい。もしかして。私の心をまた、腐らせて嗤うのかしら。それだけは厭よ。イヤ。いあいあ――そうね。もう。もうもう。朦朧……ゆるしてください、など、言わないわ。だから私を殺さずに一生置いてくださいな。そこよ。其処よ。底を覗き込みなさい。そうすれば私と貴方は永遠に、鳥籠の中身として生きていける。早くしなさいよ。だって。貴方、覗き込まないと私も撲れないじゃない。
ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――僕は赦されたのだ。世界が。地球が。宇宙が。彼女の父上が。僕の存在を鎖で縛らずに。炎で消さずに。繋がりを認めて終いまで墜落させたのだ。此れが絶対の愛情では無いと誰が叫ぶ。僕が彼女の脳味噌を破棄した。総ては此れで決着だ。とろけるような殴打が耳朶奥にすっ……と、唇がにょろり。ぞくりと謳う背後の感情が、僕を天国に誘い込む。如何だ。彼女の貌を御覧。僕の肉体。拳。痛みが無ければ生きる事も不可能なのだよ。蒼を抉ろう。肉を削ごう。骨を鳴らそう。父上が視て在る前で、彼女の死への沸騰を奏でるのだ。
ああ。父上。私の恍惚を邪魔しないでください。脳味噌は最初から無いのですから。母上の行方がわからない際、父上が教えてくれた事じゃぁないですか。貴方と居た時間は父上の中で無限の天国だと、おっしゃったでは在りませんか。殺してください。腐らせてください。骨が嗤います。からからと頭が回ります。もう。限界です。さようなら――父上、また、次の機会に。
最近の連中は如何だい。彼女の脳味噌に憑いて、病み放題の研究漬けか。ああ。僕と彼女の戯言に侵されて、自分が父上に成る気分に陥ったのだろう。軟弱な連中だ。俺以外の貴様等が僕と彼女について、解明出来る事など皆無だと何度――新人たる貴様には教えてやろう。父上ってのは神さ。僕と彼女が信仰する、腐敗の神さ。ねつっぽいものだね。何せ父上は冷め易く、新しい僕と彼女を探して在る――おや。遅かったね。次の僕は貴様だ。次の彼女は読んでいる貴様だ。
こんなものを読んでいる時点で、脳味噌など要らないと嘲って在るようなものだ。クカカカカッ!
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